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赤線地帯のmingoのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
3.7
溝口健二の遺作。
売春禁止法によって閉鎖される直前の吉原遊郭で働く、娼婦たちの生き様を描いた作品。

先日神代辰巳の「赤線玉の井ぬけられます」を鑑賞したので、比較対象として。

神代辰巳の方が荒々しく個人的には好きなのだが、こちらはこちらで素晴らしい。カメラマンは様式美に長回しが魅力の宮川一夫だし、全編にわたりテルミンのようなお化け音のような音楽もどこか不思議さを漂わせ(電子音楽のパイオニア黛敏郎によるもの)、かつ何より時代が良い。

ここから先は個人的であり客観的な意見にはなるのだが、赤線の女たちの人生模様を描いてるだけで、廃止の賛否について語るのかなと思いきやあまり主張されていなかったし、物語全体として出来事の中身が小さく、変化もなければ起伏に欠けているのではと思ったのも事実。

そして美しさが際立った若尾文子と雨月物語の京マチ子を起用している割にはそれぞれの個性や名演技を見せるような機会はなく、なんとなく印象に残らないのが残念。
それでもラストシーンはとてつもない演出力なので、それだけでも観る価値はある映画だ。
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