ひろぽん

ヘルタースケルターのひろぽんのレビュー・感想・評価

ヘルタースケルター(2012年製作の映画)
3.2
完璧な美貌を持ち芸能界の頂点に君臨するトップモデル・りりこ。しかし、その美しさは全身整形により作られたものだった。誰にも言えない秘密を抱える彼女は、やがて整形による後遺症で苦しみ始める。そんな中、彼女が通う悪質な美容クリニックに捜査が入る。さらに生まれつきの美貌に恵まれた後輩が事務所に所属したことで、彼女は頂点から転落する恐怖と、崩れゆく美貌の狭間をさまよい次第に追い詰められていく。果たしてトップモデル・りりこの運命はいかに。


タイトルの「ヘルタースケルター」は、「あわてふためいた」や「混乱した」という意味があり、「しっちゃかめっちゃか」と訳されることもある。

また、遊具の「らせん形の滑り台」という意味もあり、りりこの人生が滑り台の上から下へ落ちていくイメージと重なり、しっくりくるタイトルになっている。

目・爪・髪・耳・アソコ以外は全て整形し、その秘密を隠し一世風靡して世間が熱中するも、ドンドン新しくて可愛い若い子がライバルとして登場し、消耗されていく。結局はその対象は誰でも良くて、ただ入れ替わっていくだけなのだという事実がとても切ない。

何年もトップの座に君臨することができないのに美醜に執着し、容姿は美しいのに中身は醜いりりこの姿が滑稽だった。


“やれば?みんなすぐ忘れる。
私たちはどうせただの欲望処理装置。
無責任な欲望だけあって、
名前と顔だけがただすり変わっていく。”

こずえのこの台詞がとても印象的だった。
忘れられていく事が死ぬのと同様だと考えるりりこと、人生の意味を見いだせず自分の存在価値を否定するようなこずえは対極な考え方だけど、どちらからも悲しさを感じられる。


“若さは美しいけれど、美しさは若さじゃない”

この言葉の意味は、人それぞれの解釈や感じ方があってとても深い意味のある名言だと思った。

麻田検事の口から発するポエムは寒気がするほど気持ち悪くて全然好きになれなかった。

前半はりりこに同情や共感をしながらも、後半は善悪の判断もつかないくらい暴走していく姿はまさしく狂気の沙汰としか言いようがなかった。

マネージャーの羽田の彼氏を目の前で寝とって見たり、他の子を襲撃させたりとやることなすこと恐ろしかった。

美醜に囚われるのはナンセンスだが、結局みんな美しいものが好きなんだよな。

沢尻エリカの攻めた濡れ場があるが、彼女の美しいおっぱいにはエロさというより芸術的なアートを見ているような感覚になった。

沢尻エリカの全身全霊をかけている演技には食らったが、本人の薬物問題とリンクしている部分があったからなのかもしれない。

窪塚洋介と沢尻エリカのツーショットは眼福だった。なんであんなにカッコイイんだろうか。それに加え、綾野剛の色気も半端なかった。水原希子は他の人とは違う独特の魅力があって素敵。新井浩文のおネエキャラもハマり役で良かった。


最初から最後まで蜷川実花の極彩色が際立つ鮮やかで綺麗な世界観だった。だが、終始どことなく寂しさと切なさを感じる作品だった。
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