岩嵜修平

全員死刑の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
3.4
全員死刑

間違いない才能も、肌には合わない

予告編を観てどう考えても好きではないだろうなと思いつつ、2017年の町山賞受賞ということでもあり、タマフルで取り上げられもしたので観てきました。

事前に『孤高の遠吠え』も観ましたが、確かに、この絶望的な暴力をポップに描けるセンスは凄い。

『孤高の遠吠え』で演技をしたことが無い本物の方々を、映画的に観せる手腕も凄いと思う。DVD鑑賞だったので、流石に途中で止めてしまいましたが、人気があるのも分かる。

今作でも、殺人シーンとかグロいのに笑えてしまうし、リアリティがあるのに生理的な不快感ギリギリで保てるのは生来のセンスとしか言いようがないでしょう。

キャスティングも、殺人親子も被害者親子も絶妙で。
特に間宮祥太朗は凄い。あんなに華があって『帝一の國』ではハーフの王子様みたいな役やってたのに、こういう、剥き出しの野生を醸し出しながら、家族には従順という、ピュアな獣をまんま演じていて、演じられる役の幅が広い。

鳥居みゆきや六平直政らの怪演も演出あってのものでしょうし、ちゃんとプロを演出できる力があることも証明してました。

兄役を演じた毎熊克哉さんという役者さんの輩感も素晴らしい。

暴力の怖さを知っているからこその、こういう演出になっていることも理解できる。

ただ、肌には合わない…。
こればっかりは、どうしようもない。
観ていて、しんどくなってしまった。

これだけの事件を実録的に切り取ったら、同じプロデューサーの『冷たい熱帯魚』のようになってしまうだろうから、作品としての差別化においては、このアプローチの方が正解なのだろうけど、それでも園子温的な作品の方が好きかなぁ。

新たなスター監督と、メジャーなスター俳優とが邂逅した作品としてはめでたい。
岩嵜修平

岩嵜修平