えむえすぷらす

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

5.0
関係者の書いたノンフィクション本を読むと史実からだいぶ脚色してますが面白い。

でもサブタイトルの「ヒトラーから世界を救った」だと当時英国負けるでと言って模様眺めしていたわが国の立場は?とか、チャーチルは戦争指導者だったが戦線で戦った人達がいたからヒトラーとの戦争に勝てたのでは?とか突っ込みたくなる。

史実との相違点
・地下鉄シーンはフィクション。戦時閣議外閣僚演説の内容も合わせて変更されている
・下院演説の内容は6/4ダンケルク撤退作戦終結後のもの

・外相ハリファックス卿との対立は史実。主張も概ね反映されている。なお彼がのちに駐米大使になった事を否定的に捉えた字幕がついているが最重要同盟国大使であった事を考えれば不当な評価だろう。
・労働者階級は戦争に肯定的だった。厭戦気分があったのは親ヒトラー傾向のある人もいた上流階級でハリファックス卿も好きなキツネ狩りに招待されて懐柔されていた。
・チャーチルは講和交渉討議では頻繁に態度を変えていて迷いが強かったらしい。戦時閣議外閣僚演説で腹が固まっていった面はあるように思われる。

映画タイトルの「DARKEST HOUR」は6/4「最良の時/FINEST HOUR」下院演説に由来していると思う。
そしてこの演説はシェイクスピア「ヘンリー五世」の聖クリスピンの日の演説をモチーフにしている。ヘンリー五世は決戦を目の前に戦いに馳せ参じた幸いなる少数が後に戦いを振り返ってこの傷はあの戦いで得たものだと誇れるものにしようといった事を言う。これはチャーチルは「FINEST HOUR/最良の時」として引用したのだと思う。
聖クリスピンの日演説は「人生はシネマティック!/THEIR FINEST」の戦争省での会議で省側トップがもろに引用している。ちなみに原作小説のタイトルは「THEIR FINEST HOUR AND A HALF」でチャーチル演説に典型的な映画の尺である「1時間30分」の意味を付け足している。