カツマ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のカツマのレビュー・感想・評価

4.0
第二次世界大戦時、正に歴史の転換点にいたウィンストン・チャーチル。彼の大き過ぎる決断への葛藤を、追い込まれ行く大英帝国の誇りと尊厳に重ね合わせて描き出す、重厚な政治ドラマ。特殊メイクのせいもあり、もはや常人の演技という枠を越え、本人そのもののように見えてくるゲイリー・オールドマン。彼の一世一代の名演は画面に収まりきれない迫力で、アカデミー賞主演男優賞に相応しいことは言うまでもないほど圧倒的だ。恐怖と暗黒に染まる世界の中で、ヒトラーの侵略に敢然と立ち向かった男の姿がここにはあった。

ときは第二次世界大戦下のヨーロッパ。ナチスドイツはオランダ、ベルギーを陥落させ、フランスにも壊滅的な打撃を与え、その進行は勢いを増すばかりであった。
時を同じくしてイギリスでは、首相のチェンバレンが野党の不信任により辞職に追い込まれる。後任には野党との繋がりの深いチャーチルに白羽の矢が立ったが、彼はナチスドイツには徹底抗戦の構えを取っていた。
チャーチルは首相となった直後、ダンケルクに取り残されたイギリス陸軍救出作戦を決行。政敵によるドイツとの和平工作に押し込まれながら、迷いの中で、重要な決断を迫られることになるのだが・・。

チャーチルは歴史的に見て英雄なのかどうかとなると微妙なところだ。和平政策を選べば、多くの兵士の血が流れることもなかったのかもしれない。だが、歴史物語とは全てが結果論なのだと思う。彼の政策は結果的に大英帝国を救い、こうして映画化されるほど歴史的に重要な人物になれたのだから。
チャーチルという人物を通してイギリス人のアイデンティティを高らかに宣言し、闇の中に光の矢を放つ。剛健なパワーを宿した作品だった。
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