ひでやん

孤狼の血のひでやんのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.2
群れを成す獣を、生かさず殺さず手懐ける一匹の狼。

『アウトレイジ』に対する東映の答え─そんな宣伝文句に惹かれた今作はのっけから衝撃。豚のケツから始まり、「これがヤクザ映画の本家、東映の本気じゃあ」とばかりの拷問。見る側に覚悟を確かめさせるようなグロさ。ベッドに縛り付けた加古村組の構成員を拷問するシーンでは、成す術のない男にメスを入れる痛々しさ。そして終盤では、尾谷組の一ノ瀬が日本刀でぶった斬る残虐さ。

豚に真珠に便所、地上波じゃ許されない描写だ。しかし、テレビじゃ映せない事を出来るのが映画である。「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」というキャッチコピーだが、「映画じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」である。

昭和63年の広島県にある架空の都市・呉原を舞台に、血で血を洗うヤクザ同士の抗争に身を投じていく刑事2人。『仁義なき戦い』を彷彿させるナレーションが熱い。ギラギラと血走った目、ドスの効いた声、ギトギトと光る肌。猛り狂う男たちの魂と魂のぶつかり合い、顔ヂカラ勝負に目が離せない。背中に墨を入れた怖い熱波師たちにぶんぶんタオルを振り回され、その熱波をバッサバサと浴びてる気分。

ずらりと並ぶ豪華な顔ぶれ。竹野内豊がいまいちハマっていなかったが、皆、対立する暴力団の一触即発状態を見事に演じた。五十子会、尾谷組、加古村組、右翼団体と、彼らの熱演は素晴らしかったが、役所広司の圧倒的な存在感がデカ過ぎた。型破りな捜査で突き進み、悪で悪を飼い殺す狼。14年前の疑惑の真相が明かされ、そのドデカイ存在が消えた瞬間、松坂桃李の正義が崩れて覚醒する姿にゾクリ。

ラストシーンが痺れる。狼のライターは渡されたバトンだ。見た目は悪、中身は正義ってやつを大上から受け継いだようで、点火のラストカットがカッコ良過ぎる。
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