Melko

ルージュの手紙のMelkoのレビュー・感想・評価

ルージュの手紙(2017年製作の映画)
3.7
くたびれアラフィフ女の再生物語。
やりたいことを見つけ、生きがいのために生きていこうとする女がただ強くなるだけではなく、男からのまっすぐな愛を絡めるところがフランス流。?

育ての親と娘。
自由奔放に生きてきたツケか、友達も身寄りもなく癌持ちのベアトリス。誰だと思ったら、カトリーヌドヌーヴ先輩…!いい歳のおばあちゃんなのに、なんだこの色気は…着てるものがド派手で、口うるさいけど絶妙に愛嬌がある。
助産師としての仕事を誠実にこなしつつ、シンママとして息子を育て上げ、くたびれちゃったクレール。(たぶん更年期真っ只中)

死期を前にして、誰も頼れないベアトリスがアテにしてやってきたクレールの父アントワーヌ。恐らく最後の望みだったのだろう。その死を最初から知ってたのか、本当に知らなかったのかは、正直分からない。
女は演技で泣けるから。
最初からクレール目当てだったのかもしれない。
償いたいベアトリスの気持ちを最初は頑として拒否しつつ、結局は受け止め、病気の彼女を見捨てられないクレール。
30年間の重み。
それだけ長い間放ったらかしにされたのに、実の母でもないベアトリスを受け入れ、面倒を見る覚悟を決めたクレールと、実の母のように無邪気に接するベアトリス。この老々親子が、長い空白を短期間で埋められた理由、かつて2人がどれだけお互いを信頼しあう仲だったのかは、2人がお互いを見る表情や、発せられる言葉から察する必要がある。多くは語らず、余白から感じる必要があった。説明が無さすぎる映画は、画に集中できなくなるから基本的に疲れるけれど、これは大丈夫だった。
死を実感したベアトリスと対比して何度も挟まる出産シーンが、とても神秘的だったから。(なんと、リアルだそうで。)助産”師”という言葉が出てきたけれど…わたしはやはりこの仕事は女性でないと務まらない気がした。なんとなくだけど。布団に包まる2人がとても微笑ましくて。。

ベアトリスとクレールの関係性に、私の祖母と母が重なった。
家族置いて急に家出して何年も音信不通だったり、連絡取れたと思ったら別で家庭を持ってた、奔放で破天荒な祖母。私がたまーに連絡したら必ず、良い人はいるかと聞いてきた祖母。タバコとパチンコが好きで、派手好き。
真面目でお人好しで、介護という命の現場で逞しく働く母。
私の知らないところで、遠方に住む祖母に会いに行き、お茶して談笑し、お小遣いを渡していた母…。
その関係性に私が口を挟むべきではないのは心得ている。だって祖母と母は、母と娘。2人にしかわからない空気がある。

実の母と折り合いが悪く疎遠のクレールに、「あなたのお母さんは幸せなはずよ。あなたみたいな子を産めたんだもの。」とベアトリスが言う。
自分の娘だったら良かったのに…って思ってたのかな、ずっと。そうだったら、もっと早くに再会できてたかもしれない。このセリフに、30年の思いが詰まってるかのようで、涙が出た。
Melko

Melko