リコ

レディ・マクベスのリコのネタバレレビュー・内容・結末

レディ・マクベス(2016年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

【かまきり夫人、昼下がりの殺人】

殺意が沸いた。もちろんヒロインとその間男にである。
二人がベッドでギシギシアンアンしてる間ずっと、「タヒね!早よタヒね!二人ともおっタヒね!」と心の中で呪いをかけていた。ここまでありがたくもない濡れ場もないが、ロマンティックに見させない計算だったのかもしれない。

レディ・マクベスことキャサリンは、当時の男尊女卑の思想や家父長制度に確かに抑圧されていたのだが(コルセットや重く引きずったスカート、きつく編み込まれた髪型にも象徴されているように)、いったんそれが解かれて飛び出してきたのは、唯我独尊の生存本能をもった怪物だった、というのが、よくあるフェミニズム的ストーリーと一線を画している。己の生存と繁殖のためにオスを必要とするカマキリの如く(妊娠は予想外っぽかったけど)能面の表情をつらぬくフローレンス・ピューの演技は、なるほどブレイク作にふさわしい。
だけど個人的には、メイドを演じたナオミ・アッキーの方を「スタア誕生!」として推したいのだ。男どもには慰みものにされ、女主人には良いように搾取され、あげく声を奪われて抹殺される女。ここまで極端でなくても、あの時代も現代にも確かに存在してきた名もなき弱者たちの叫びを凝縮したような演技は素晴らしかった。

なので、この映画を見てピューを某若草映画に抜擢した某監督より(これ見てあの役!?マジで?!)、アッキーを「このサイテーな世界の終わり」での処女こじらせ殺人犯に抜擢した誰かさんの慧眼に感服する。

蛇足:ヒロインに助言をひとつ与えるならば、一言「本を読め!」
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