すずき

地獄愛のすずきのレビュー・感想・評価

地獄愛(2014年製作の映画)
3.5
シングルマザーのグロリアは、出会い系サイトでミシェルと出会う。
激しい恋に堕ちたグロリアだったが、ミシェルは実は詐欺師のジゴロ。
ミシェルに金を貢ぎまんまと逃げられるグロリアだったが、執念で彼を見つけ出す。
なんとしても彼と一緒にいたいグロリアは、娘を捨てて彼と生きる道を選んだ。
グロリアはミシェルの妹と偽り、彼と共に富豪の婦人のヒモとなり居候する事に。
だがミシェルが他の女を抱く事を許せないグロリアは、とうとう我慢の限界を迎え、婦人を手にかけてしまう…

実在の事件を基にしたドラマで、生々しい殺人シーンとベッドシーンがグロテスクなR15作品。
しかし何よりグロテスクなのは、一途で純粋にミシェルを愛し、それ故に凶行を繰り返すグロリアの心情。
彼女の愛を純粋かどうかは異論はあるかもしれないけど、俺はそれも愛の形だと思う。全く美しくない愛の形だが。

分からないのは、ミシェルの方。
彼は本当にグロリアを愛していたのだろうか?
愛していたというなら、あまりにもグロリアを蔑ろにし過ぎだし、愛していないなら、トラブルメーカーのグロリアを側に置いておく意味が分からない。
案外、彼は何も考えてなくて動物的本能に従って行動してるだけなのかも。

ストーリーは四章仕立てで、第二幕からはヒモ生活→グロリアブチ切れて破綻、という展開なので、ある意味起伏は少なくて淡々とした語り口。
「ハウス・ジャック・ビルト」にもちょっと雰囲気似てるかも?
2人の破滅を描かず、それを予感させるだけに留めるオチは少し弱いと感じる人もいるかも。

暗いシーン多めなので部屋を暗くして見た方が良い。
かと思えば、突然明るくなったり、ライティングの演出が印象的。
構図もちょっと変わったシーンがあって、全体的に不安感煽る感じ。

あとグロリアが突然に歌い出す、ミュージカルっぽい演出の独白シーン。
その歌が映画のエンディング曲にもなってるんだけど、俺、この映画のテーマソングは「ラムのラブソング」でもいいと思うんだ。
『ああ男の人って いくつも愛を持っているのね あああちこちにバラまいて 私を困らせるわ(中略)私がいつでもいちばん あなたの全てが 好きよ…好きよ…好きよ…いちばん好きよ』の部分とかピッタリかと。