フジリソ

ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューションのフジリソのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます




 
がっつりネタバレありです。







累計死者数26億人。世界に絶望を与えた謎の生物エウレカの7体目が東京に出現。物理攻撃ではエウレカにダメージを与えられない人類は、伝送システムでエウレカの内部にダイブすることで抵抗しようとする。伝送システムのパイロットに抜擢された14歳のアネモネは初戦で見事にエウレカを撤退させることに成功するが、エウレカ内部で出会った青緑色の髪の少女がどうにも気になって…。


今作の主人公はアネモネ。テレビシリーズではエウレカのコピーとして造られたアネモネでしたが、今回は一切そのような生い立ちはなし、危うげな少女ではなく気の強い普通の少女として描かれています。一方、エウレカは失われたレントンを再生させようと世界を行きつ戻りつと繰り返し、ボロボロになっています。


舞台、キャラクター、ストーリーとテレビシリーズから考えるとかなり大胆な設定となっていますが、続編、映画版、ハイレボ1と見てきた中で、これは個人的にですが、初っ端から一番【エウレカセブン】してるなって思いました。トラパーないし、リフボードもないゲッコーステイトもいないはずなのに。


これは、制作スタッフが【エウレカセブン】を受け止めて先に進めようとしたからだと思います。

今作でエウレカセブンというシリーズの根本を揺るがす決定的な再解釈がなされてます。パラレルワールドとして描かれてきた各作品の意味の決定付けと今作をポイントとしてそれらシリーズの合流が図られたことによって、特に一見ハッピーエンドとして終わったテレビアニメシリーズの意味が大きく変わったと僕は思いました。

50話のアニメシリーズが成功をおさめていただけにこの試みには賛否が分かれると思います。ただ、決着のついた話、特に美しさを持って終わった作品の映画化において今回の方法は個人的にはありでした。成功した前作を解体して新しいものを立ち上げる。やっぱり総集編や鮮度を失った設定をそのまままにパラレルワールドで当時をリバイバルではエウレカセブンじゃないんです。新しいものを構築して王道をやる、これが僕にとっての【エウレカセブン】です。

話に目を向けてみると、ネットワークを通じてエウレカにダイブする仕組みとか、人類の命運をかけるわりにはチームの人数少なすぎじゃね?とか気になる部分はありましたし、探せばきっと粗は多く目立つ作品ではあると思いますが、アネモネと父親の関係性を軸に話を成立させていたし、表現の工夫でおそらく潤沢とは言えないのであろう予算的な問題を解消しているように思えました。

特に、ハイレボ1ではあまり有効に機能しているとは思えなかった映像の使いまわしも今作では、多少の違和感はあれど、世界を行き来するという設定を丁寧に見せたことで上手く消化出来たこと、ボリューム的にも適量に抑えられていたこともあって、映画を上手く盛り上げる要素になっていた思います。というか違和感すらも絶妙な演出に感じられました。

そんな演出・編集の妙で揺さぶられてからの終盤。ドミニクがこっちの世界に現れてから先の振り切れた展開、堪らなく好きです。1時間半という限られた上映時間内でちゃんと面白い作品に仕上がってました。

また改めて感じたのはエウレカとアネモネのキャラクターとしての強靭さです。立ち位置や性質が変わっても彼女たちの中にぶれない芯があったから今作の二人を別の人生を歩んだエウレカとアネモネとして見れました。ここは声優さんの力量も大きかったと思います。だから大胆な設定下でも別作品ではなくきちんと【エウレカセブン】の新作として今作を起動できたのだと思います。

まとめると今作は【エウレカセブン】という土台の上で今まで積み上げてきたものを解体し新たなものを構築して次に繋げた。そんな作品だと僕は思いました。

…ってな感じで色々書きましたが、一番言いたいのは、「『Tiger Track』が流れた時の作品への引き戻し感はマジ半端ない」てことと、「あぁ、俺は今【エウレカセブン】の新作を観てるんだ」と実感出来たのが本当に嬉しかったってこと。50話のテレビシリーズ以後のエウレカでこの感覚を覚えたのは正直今回が初めてでした。とっても楽しい90分、見てよかった。

とはいえ続編に入り混じる期待と不安。あぁ、次作で完結編かぁ。とりあえず過去作をPLAYBACK、PLAYFORWARDしながら公開を待とうと思います。
フジリソ

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