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アネットのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
3.5
もうね、待ったよ。めちゃくちゃ待ったよ。サントラ出たの、去年の7月よ?いくらなんでも焦らしすぎでしょ?それからずっと公式もネタバレも極力避けて過ごしてきたけど、かなりお粗末なヒアリング能力をもってしてもサントラの歌詞の断片だけでうっすらあらすじ読めちゃってるんですよこっちは。どうしてくれんの?ねえこれマジで。

そんな状態にもかかわらず、冒頭いきなり「レディース・アンド・ジェントルメン、これが最後の深呼吸です。さあ、それでは息を止めてご覧ください!」とゴリゴリにハードル上げてきたと思ったら、カラックス自身がコンソールルームからスパークスに直接指示を出して曲が始まるんですよ。そんでもって、コーラス隊をはべらせたままスタジオ出たら、しれっと主演3人が加わって往来を歩きながら歌い出してそっから本編が始まるんですよ。まずこの時点で含み笑いが止まりませんでしたよね。どんだけえええ?って。

展開のあれこれは実際に体感していただくことにして(エンドロールもお見逃しなく!)、何よりもまず特筆すべきは本作がありとあらゆるアダム・ドライバーの豪華詰め合わせと化していること。これに尽きます。良いアダムにワルいアダム、推せるアダムに解せぬアダム。至福の笑みを浮かべるアダムに懺悔の涙を流すアダム、そしてもちろんエロいアダムも死んだ魚の目をしたアダムも何から何まで堪能できます。平たく言って最高です。それにしてもまあカラックス、男女の裸を美しく撮るという点においては天下一品。エロいしそそるしそれでいて肝心なところは映したり映さなかったりするんだけど、それより何よりまず「美しい」と思わされるのが凄いなあ、と思います。

カラックスの作風にスパークスのあのサントラがどうフィットするんだ?ってところもめちゃくちゃ興味深かったんですけど、ざっくり言えば「魔合体」というのが最もふさわしい気がします。愛を囁き合う男女も己の不遇を嘆く伴奏者もバカバカしいほど壮大かつ大仰に見えるのに、何だか変に惹き込まれるというか目が離せないというか、とにかく完全に「これしかない」と思わされてしまう説得力に満ちてるんです。何なんだろうなこれ。ところでスパークス兄弟、プライベートジェットのパイロット役としても出演されてましたよね?多分。ふふふ。
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