あなぐらむ

トルコ110番 悶絶くらげのあなぐらむのレビュー・感想・評価

トルコ110番 悶絶くらげ(1978年製作の映画)
4.6
鑑賞済だったが、いつだったかシネロマン池袋さんで再見。

荒井晴彦脚本だと、これ一番いいんじゃないか?
関西娘の原悦子が恋人と吉原で稼ごうと上京し、心優しいポン引、星野暁一(仇名は健さんで「唐獅子牡丹」が大好き)と出会ってトルコ嬢として身を立てていく風俗グランドホテル成長劇。既に熟女枠の片桐夕子が素晴らしい。

熟女枠と書いたけど片桐夕子は当時26歳、女盛り。「片桐夕子」としてのデビュー作「女高生レポート 夕子の白い胸」(本作と同じ近藤幸彦監督)の撮影時には泣いてスクリプター・白鳥あかねに叱られていた彼女が、原悦子のソープテクニックのコーチ役なのは面白いし感慨深い。
声優の千葉繁が童貞君役で出演、片桐夕子に優しく筆下ろしして貰うシーンはたいへん印象的。童貞にも、自分の愛する外道な男(影山英俊)にも菩薩の様に接するベテラントルコ嬢を哀感たっぷりに演じ風格。デビュー作から7年、原悦子を支える脇の花として輝いている。
そしてもう一人、フーテンでいかにも危うげなムードで登場する吉沢由起がこの世界の負の側面を背負って転落し、カタストロフを作る。

でね、この映画みたいなものが成人映画のモデルケースの一つだと思う訳ですよ。
風俗業という性の現場で起こる人間模様というのは、極めてオーソドックスな題材。人の生き様も出る。悲哀も出る。
最後、橋の上から健さんのレコードを無表情に棄て続ける原悦子の表情。これも日活の青春映画だと強く認識させられる。