しゅんかみ

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉のしゅんかみのレビュー・感想・評価

5.0
生涯ベスト作品の第2部。

第1部の『旅の仲間』の直後からスタートするため、指輪を捨てるために2人で行動することにしたフロド&サム、オークに連れ去られたメリー&ピピン、それを救うために追跡するアラゴルン&レゴラス&ギムリの3人と、三つの場面が行き来する構成になっている。
RPGでいうとパーティがバラバラになってしまってるけど、プレイヤーはそれぞれのパートを並行して操作してる感じで、僕はこの構成かなり好きですね。


そして今作から、このシリーズがファンタジーでありながら、指輪を巡るリアリスティックな「戦争映画」であるという側面が目立ち出すのも良いですよね。
今作で描かれる戦争は、闇の勢力に寝返った白の魔法使いサルマンの勢力が、冥王サウロン率いるモルドール軍と共に人間の勢力であるローハンとゴンドールを挟撃しようとすることから発生する戦いですが、改めて観るとそこに至るまでサルマンが意外に丁寧に兵力を整えていたり、人間側にスパイを送っていたりする事、そして人間側は人間側で勝つために最大限の工夫を凝らしていることもわかってくるので、やはりこのシリーズは観れば観るほど楽しい。

そして、隠密行動をしてるフロド&サムのパートも、地味な映像になりそうなところを、今作で本格的に登場したゴラムという、映画史に残る複雑かつ異様なキャラクター(と僕は思っている)によって、全くダレることがないのも素晴らしいですね。

原作の『二つの塔』では、前半が対サルマンの戦い、後半がフロド一行の動きを描く構成になっているのに対して、映画では時系列を追いながらそれぞれのパートを描くことで整理されて観やすくなっているのも、一見普通に見えてとんでもないことをやっていると思う。


で、そんな二つの塔で一番好きなシーンはといえば、ベタですが何と言っても絶体絶命展開からの援軍ドーンのシーンですね(身もふたもない言い方)。
追い込まれて城から撃って出るアラゴルンとセオデンのシーンでも十分感動的なのですが、朝日を背景に突撃するガンダルフ&ローハンの騎馬隊のシーンは超痺れる。

そして並行して描かれるエントのブチギレ大行進&水攻めシーンも、あれがミニチュアで描かれてることも含めて最高です。


一見勧善懲悪的なシリーズに見えがちなこのシリーズですが、ローハンのセオデン王は戦うと決めるまで散々うじうじしていたり、堕ちるとこまで堕ちてしまったグリマという存在がいたり、ボロミアの弟のファラミアという複雑な背景を持ったキャラクターもいたりする。とても味わい深い話だと思います。

シリーズの繋ぎ目なのにもかかわらず、起承転結と映像としての楽しさを欠いていない、最高の映画です。