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アイスと雨音のRenのレビュー・感想・評価

アイスと雨音(2017年製作の映画)
3.0
オーディションで選ばれた6人の新人俳優たちにフォーカスを当て、彼らの舞台本番までの1ヶ月間を74分ワンカメワンカットで撮った実験的な青春映画。策に溺れたかと勘繰ってしまったが、ヒリッと青いこの感じは紛れもなく松居大悟作品だった。佳作。

物語は二の次。真っ直ぐに青くてイタくて輝いていたあの頃を凝縮した、澱み無き青春映画で決定で良いだろう。

1ヶ月をワンカットでどう表現するのか?という点が作品のシズルになっているのは勿論あるが、カットが割られず物語が進む緊迫感に合致するようなテーマ選びにも成功していた。現実の世界は朝も夜も地続きで、どんな言葉もどんな行動もカットされず一筆書きのように平等に無慈悲に過ぎていく。舞台演劇そのものだし、人生そのものだ。

自分の好きなことや一度信じたものを追い続ける、もとい、大人が提示した条件やルールに抗いながら自分の好きなことや一度信じたものを追い続ける自分が好きだったあの時代の話だった。きっと誰にでもある話だも思う。
自分たちが世界の中心で、世界の中心に生きる自分たちに恋することが青春なのだと思い出させてくれる。この作品も見事に「若い」が、イタくても彼ら自身は嘘じゃないのだろうと伝わってくる。74分間を全力で演じ切る新人俳優たちのパワーとMOROHAの魂の歌によって。

松居大悟作品は振り返ればダサいと感じてしまうような記憶の瘡蓋を引っ掻かれる(不)快感が肝なので、人生の綺麗じゃなさもひっくるめてがむしゃらに叫び続けるクリープハイプ(『私たちのハァハァ』『ちょっと思い出しただけ』等)やMOROHAが似合うのは当然なんだよなーと改めて納得した。

そういう青春映画に触れたい方にはおすすめの一作。特に邦画ファンには一度は観てほしい。
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