こたつむり

クライム&ダイヤモンドのこたつむりのレビュー・感想・評価

クライム&ダイヤモンド(2001年製作の映画)
3.9
♪ 屋根には 虚ろな鳩
  甘美な言葉だけを食べてしまった

確実に邦題で損している作品ですね。
硬派なサスペンスを想起するタイトルですが、実際は軽妙なクライムコメディ。タラ…某有名監督を彷彿させる物語なのです。

例えば、洒脱なオープニング。
60~70年代を連想させるアニメを活用し、見事なまでに軽妙な雰囲気を醸し出していました。この辺りはタラ…某有名監督が最も得意とするところですよね。

また、映画好きの人物が登場するのも同様。
彼は名作の台詞をやたらと引用する殺し屋なのですが、タラ…某有名監督の作品に出てきそうなくらいに“熱く”語るのです。演じたティム・アレンの雰囲気も相俟って、主人公を喰らうほどの存在感でした。

それに役者さんの魅力を熟知しているのも同様。特にヒロインを演じたポーシャ・デ・ロッシの“真顔と笑顔のギャップ”を見事に捉えていました。これがギャップ萌えというやつですな。うしし。

あと、現在と過去を交互に描く展開も同様。
ただ、これについてはタラ…某有名監督ほどに洗練されているとは言い難く。正直なところ、もう少し工夫できたと思います(途中で色々と疑わせることが出来ますからねえ)。

まあ、そんなわけで。
タラ…某有名監督に似ている部分を強調しましたけど、けっして二番煎じではない作品。それに映画への情熱はタラ…某有名監督に負けないほど。最後の最後まで“引用”を忘れませんからね。映画好きならば確実に鷲掴みにされると思います。

ただ、残念なことに。
本作を仕上げたクリス・バー・ヴェル監督の次回作は現時点で無し(本作は2001年の作品です)。これだけの熱量とセンス。在野に埋もれさせるには勿体ないと思うのですが…。

あ。
もしかしたら、タラ…某有名監督が別人を装って作ったのかも…って、そんな筈はないですね。何しろ、本作の上映時間は100分を切りますから。あと、脚線美に拘らないし。
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