まりぃくりすてぃ

心と体とのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.7
前半完璧。荒唐無稽さへと崩れてく? いいえ、終わってスッキリよ。

至福の鹿、でスタート。白銀の森の。そして牛。それから、人。───そんな冒頭、ワンショット除いて全部が横アングルだから、“人も獣の一つだ”というゆるメッセージを白人さんたちの端整な横顔がくれたかも。
主演男優ゲーザ・モルチャーニの清潔で張りと深みが同時にある枯れ葉味。プチメンヘラ役主演女優アレクサンドラ・ボルベーイの不思議な抜け感ある青白い可愛らしさ。そして演技・演出・脚本のどこにもガキ臭さのない高品質リアリズムは、飽きをなかなか生まない。

食肉工場での牛のオート屠殺を“社会科見学的に”見せつけてくる時間帯は、ちょっとだけ拙い飾りだったけど。殺す瞬間だけすっ飛ばしてるんだもん。既にわが日本には、ハンマーと包丁による昔ながらの屠殺を完撮りした逸品『ある精肉店のはなし』(2013年)があるから、臆病さをちょっぴりだけ罵っておきたいかも。
まあ、いいや。
牛用の強精剤盗難というヘンな事件に端を発しての、「存在感を誰よりも猛然と放つセクハラな分析医」と「何ぴとにも超然と切り返せる堅物メンヘラちゃん」との♀同士の面接対決が前半の面白さの頂点!

そこらへんまでは耐震性高いリアルタッチと可笑しみがまったくもう心地よかったんだけど、、、、
「夢」をめぐるストーリーが本格的に動きだしてみると、根幹部分のありえなさが肥大してきたよ。鑑賞者としては、“大人のファンタジー”を大人しく受け入れるか興ざめしてくかの二者択一をずっとずっと迫られつづける苦しい時間帯となる。
「片腕が不自由ってのがストーリーに絡んでこないんだけど?」「夢の一致なんてただのキッカケでしょうに。男子だったらリアルな彼女をさっさと抱きたくならないの? そっちの方に何倍も執着していかないとご都合メルヘンになっちゃう」「彼女のキャラ設定はそもそも何のため?」等々のツッコミ発生。

だが、CDショップ~お風呂場での行為~通話!のところで神経過敏キュンキュンファンタジー映画は私を摑み直す。
ベッドシーン。それまでアレクサンドラさんの目頭にやたら惹きつけられてた私だったんだが、、、ぶっちゃけ彼女の「目」全体が「女性器そっくり」なんだと気づかされ、何これスゴイスゴイとなる! 抱かれて側臥してる彼女の両目、あけっぱなしで形がエロすぎなことになってる。困ってしまうわ。
鹿の交尾シーンは特に映されなかったけど。。。
途中のツッコミは訂正してお詫びだ。観おわってスッキリした。面白かった!

あと、イタリアンランチの店で、ガラスごしの彼女の金髪に赤信号がリボンみたいに重なるとこ、よい。