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わさびのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

わさび(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

山葵にコーヒーにビール…辛かったり、苦かったりして、子供の頃は全然美味しくなかった。

なんで『美味しくない』って矛盾を飲み下すのか…辛苦を味わう意味を、少しずつ理解していく。

懊悩があるからこそ…
平静が美しいのだと思える。

煩悶とするからこそ…
静けさに安堵を覚える。

純粋さを失ってこそ、その尊さを知る。

突き刺すような辛みが与える実感。
それはまるで、山葵の味わい。

だから、入れ過ぎると涙が出るのかもね…

嚥下した後に残る清涼感。
ほのかな甘さ。

様々な感情がある中で…
一瞬の鮮烈さの後に続く余韻。


わさびー

外山文治監督、短編三部作のラスト。


叙情という言葉の意味を、存分に味わえる…
とても優しい短編集だったと思います。


深みのある味わいを作り上げていく行程。
この複雑な余韻こそが、人生なのかも…

上昇する速度と緩やかな下降。
誰にとっても等価な…移ろいゆく時の流れ。

生者必滅…
永遠なんて存在しない。

だからこそ、この瞬間を尊ぶ。
catch the momentだね(笑)

リミットがなきゃ、何処までも弛緩しちゃう。
少なくとも、私はそういう怠惰な人間。

この三部作、美しい風景が印象的であるのは…とても優しい意味を持ってるはず。
寛容な心を感じた。

個人的には今作が三作中で一番好き。
他の二作の境地には、まだ早いかも(苦笑)
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