カツマ

デトロイトのカツマのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
3.9
真実を描けば描くほど、映画とはドキュメンタリーに近くなっていくものなのか。フィクションであってほしい悲惨な話がこの世には溢れ過ぎているのに、それに真正面から向き合った作品はあまりにも少ない。この『デトロイト』は正にこの悲劇的な史実に真っ向から向き合い、アカデミー賞から完全に無視されても、孤高の問いかけを叫び続ける。アメリカの背けたくなる負の歴史を忘れさせまいとする、キャスリン・ビグローの怒りとも言うべき執念を感じさせる作品だ。

1967年デトロイト。黒人たちのパーティが警官隊に摘発され、多くの黒人が捕縛された。この事件を境に南北戦争から脈々を続く人種間闘争が激化。黒人たちは暴徒化し、無差別略奪が跋扈する事態となる。
一触即発の状態の中、悲劇の夜が銃声と共に幕を開けた。アルジェ・モーテルの窓からのオモチャの銃声を狙撃と勘違いした警官隊はモーテルに突撃。警官フィリップは逃げようとした黒人を容赦なく撃ち殺す。モーテル内にいた黒人たちや白人女性を壁に立たせ、フィリップは銃の所在を吐かせようと非道な手口へと走る。かくして、凄惨な死者を出したアルジェ・モーテル事件は歴史の1ページに消せない傷跡を残すことになるのである。

悲劇の現場が目の前で展開されているかのような迫真性に迫る映像は恐ろしくリアル。黒人たちや女性たちの恐怖がこちらにまで侵食し、その理不尽な暴力に震えるほどの怒りを覚えずにはいられなかった。
警官フィリップの行動は正当化された悪であり、それはもはやサイコパスの次元に達している。演じるウィル・ポールターは子役時代から活躍しているが、ここにきて覚醒したかのような名演。悪魔のような男を誇張無しに演じてみせた。
人種間の闘争はこの事件から何十年も経った今も燻り続けている。もっと怒るべきなのだろう。この映画はその激しい怒りを体現し、絶対に消させない炎を燃やし続けるのだ。
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