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デトロイトのohassyのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
3.5
「なぜ一言、おもちゃの銃が、と言えない?」

本作がアカデミー賞に全くノミネートされなかったことが話題になっているけれど、アカデミー賞は作品自体の評価以外にも様々な影響を受けるものだし、あまり意味はないとも言える。
製作陣や配給は興行成績に影響するから、ものすごく残念だろうけど。
(当事者だったらショックで寝込むレベル)

キャスリンビグロー監督といえば、確かにハートロッカーはすごい緊張感の映画だったけれど、正直に言えば内容はあんまり覚えていない。
ゼロダークサーティは未見(観ます)。
ストレンジデイズもあんまり覚えていないけれど、ジュリエットルイスがおっぱい出していることはパンフレットの解説で思い出した。
ジュリエットルイス、好きだったなあ。
ブラピと共演したカリフォルニアっていう映画でも

いやそうじゃない。
ビグロー監督といえばハートブルーが強烈に残っている。
若い頃に一度観たきりのはずだけれど、その手触りのようなものがしっかり残っている気がする。
すごくいい映画だった。
ストレンジデイズもハートブルーも同じジェームスキャメロン製作総指揮なのに、随分と違うものだ。
何がそうさせるのだろう。

一方で、ハートロッカー以降の作品性はどうやら一貫しているみたい。
デトロイトも、メッセージ性の強いとても緊張感のあるサスペンスフルな演出だった。
デトロイトといえば、教科書に載っていた。
自動車工業が盛んな大きな都市というイメージだったのに、暴動が起こったのが67年ということは、僕がそれを習った頃にはもうすっかり荒廃していたことになる。
じゃあ学校では何を学んでいたんだろうなあ。

人種差別や権利主義的な、こういうアメリカのダブルスタンダードはもはや驚くこともないけれど、一体どれだけ遅れた国なんだろう。
先日観たスリービルボードの舞台になっているミズーリでも、差別による虐待事件がほんのつい最近も起こっているし、トランプが大統領に選ばれるくらいだし。

とは言うものの、そういう僕も他国の事情には全然詳しいわけでもないので、映画の話に戻ると。
スターウオーズでおなじみのフィンことジョンボイエガが主演しているわけだが、これがもうデンゼルワシントンに瓜二つだ。
あまりに似すぎていて、油断するとデンゼルワシントンだと思って観ていたりする。
いやいや、デンゼルワシントンもう60超えてっから!って時々自分に言いきかせないとならないレベルで似てた。
これから、黒人を代表する役者になるかも。
遠い夜明けとマルコムXでその地位を築いたデンゼルのように。

あとはもう誰もが言っているけれど、短絡的で自己中心的で無学で仕事熱心な白人警官を演じたウィルポールターが本当にスゴかった。
ビグロー監督といえば臨場感を煽るカメラワークが特徴で、個人的にはちょっと鼻につくところもあって、だからと言ってリアルさを感じたりはしないのだけれど、ポールターは本物にしか見えなかった。
作り物の映画の中にあって、彼の存在が周りの全てに緊張感を与え、先の読めないサスペンスを生んでいたように思う。
そういう意味では、彼を差し置いた助演男優賞にはあまり意味がない気もする(いや、サムロックウェルがいるか)。
あまりに凄すぎて、今後彼自身が嫌われてしまうのではないかというほど。
北の国からで嫌われてしまった裕木奈江みたいに。
次はいい役をもらって、バランスをとるといい(大きなお世話)。

それにしても、どうしておもちゃのピストルのことをすぐ言わなかったのだろうと、見ながらどうしても思ってしまったけれど、みんな若いし、想像もできない極度の緊張の中では、何がどうなっているのかなんて分からないし、正しい判断なんて出来るものでもないのだろうな。
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