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シェイプ・オブ・ウォーターのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

4.0
60年代アメリカを舞台に、柔らかく沈んだ色味と優美な音楽が全編を彩る大人のファンタジー。バスタブのさざ波、卵を茹でる熱湯、車窓を伝う雨粒。タイトルが示唆する通り、自在にかたちを変える水は種別を超えたコミュニケーションの媒介となって、その距離をぐんぐん縮めていきます。様々な伏線とメタファーが張り巡らされた映像を、コミカルとシリアスを自在に行き来する音楽がガッチリ支えている印象。想像以上に音楽が雄弁でした。

声を発することができないヒロインを「か弱く純真な守られるべき者」としてではなく「自我も性欲もふつうにある心優しい中年女」として描いている辺りがあっぱれでもありグロテスクでもあり、その生々しさゆえに古き良き時代のおとぎ話が地に足の着いた普遍性を持ち得ていると感じました。悪役がちゃんと怖くて、味方がちゃんと優しくて、でも時折ダメなところや人間くさいところを覗かせるあたりも良かった。…と、大人であるわたしはとても好ましく思いましたがこれ、若者が見ても楽しめるかな?と少しだけ不安になったりも。レイティングはR-15+、果たして。

それにつけても60年代。アメリカには当時、テレビのリモコンが既に存在したの?と本筋には全く関係ないところでものすごくびっくりしました。あと、キャデラックのショールームとかお金かかってるなあ、すごいなあ、とばかみたいに感心したりとか。ほえー。
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