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彼女の人生は間違いじゃないのmuraのレビュー・感想・評価

4.3
彼女の人生は間違いじゃない…何としてもそう言いたかったんだ。優しさがあふれるタイトルだなと。

女子高校生妄想恋愛映画の巨匠と位置づけられても、譲れず撮りたいものがあって、そのために小説まで書いて、そこに高良健吾に蓮佛美沙子、柄本時生とゆかりの俳優たちも集って…いやぁ、廣木隆一の強い思いを感じる。いいな。

福島県いわき市の仮設住宅に住む女。母は津波で行方不明、父は農業をあきらめてパチンコの毎日。女は平日は市役所に勤め、土日だけ東京へ。デリヘルで働くために。生きている実感が欲しくて…

女をホテルに送迎するデリヘルの従業員(高良健吾)。この男が傷ついてデリヘルの面接に来た女に言った言葉…「おまえのことなんか守れないんだよ」。女はこれで男のことを信頼するようになる。必要なのは「がんばれふくしま」なんて言葉じゃないってことか。

接点はないものの、同じ市役所に勤める男(柄本時生)の話が出てくる。東京から来ている女子大生がその男に興味を示し、震災のことをいろいろと尋ねる。卒論のテーマにしたいと。

この人物が効いている。震災で傷ついた人たちに寄り添っているつもりで、自己満足に陥っているだけで。

そう、最近とくに激しいと思えるテレビのワイドショーのコメンテーターの偽善ぶりにそっくり。

なかなか皮肉が効いている。今の世の風潮に物申したいんだなと。でもそのなかで、廣木隆一はやっぱり傷ついた女に優しい。こういうのにホント弱い。

で、主役をつとめた瀧内公美。面接の場で服を脱いでいくシーンがいい。こういう女優がもっと報われるといいな。

(以下ネタバレ)
冒頭に除染がおこなわれる桜並木を背景とした1枚の写真。震災前のもの。そこに写りこむ親子3人。満面の笑顔で。このシーンにグッときた。
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