ひでやん

あゝ、荒野 後篇のひでやんのネタバレレビュー・内容・結末

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

闘うすべての者たちへ。

宿敵である裕二との対戦がついに決まり、物語はクライマックスに突入すると思われたが、すぐ近くにいた男が因縁の相手となる展開が切なかった。

前篇は「生きる」がテーマに感じたが、後篇は「繋がり」がテーマだと思った。行きつけの飲み屋である「楕円」は競馬場の形から来ているが、登場人物の繋がりにも思えた。愛に満ちた円ではなく、悲哀に満ちた楕円。

裏切る友、絶ち切る親、去りゆく女。どんなに愛しても別れ、どんなに憎んでも出会ってしまう。セックスで肉体が繋がる男女、愛と憎しみで精神が繋がる親子。そして健二が求めたのはセックスによる肉体的な繋がりではなく、ボックスで殴り合う精神的な繋がり。

拳をぶつけ合い、拳で語り合う熱き男の闘いは、誰も立ち入れない2人だけの領域。もっと来いと殴り、もっと来いと受ける壮絶な死闘は漫画チックではあったがグッときた。

菅田将暉の演技がとにかく凄かった。前篇からずっとギラギラしていた目が、裕二との対決が終わった瞬間に憂いを帯びる、その表情の変化が流石。目的を失い、脱け殻になる姿に哀愁が漂っていた。

邦画は観賞後の調べで登場人物の漢字を改めて知る。二木健二、そして父親の名前は二木建夫。「二木健」までしか映さない死亡診断書が憎い演出だった。

「ふりむくなふりむくな、後ろには夢がない」

「ふりむけば後ろには夢ばっかりですよ」
ひでやん

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