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ボヘミアン・ラプソディのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.0
20世紀フォックスのいつものあのジングルがブライアン・メイのギターで奏でられると、そこから先はライブ・エイド当日の朝を迎えたフレディの背中越しの景色。Somebody To Loveが厳かに鳴り響く中、ベッドから出て身仕度をすませ車に乗り込みウェンブリー・スタジアムへと向かい、慌ただしく立ち動くローディーや鈴なりのオーディエンスを細切れにカットインさせじわじわとボルテージを上げたところで、さあいよいよステージへ。掴みはOK、たった1曲でここまで劇場内を暖めるとは何という力技…!時間にしてわずか5分、これほど完璧なイントロダクションがあるものかと舌を巻きました。すごいわ。

時計の針は1970年へと戻り、ヒースロー空港で荷役に勤しみつつ夜遊びに興じる若き日のフレディを追う展開に。目をつけたバンドからシンガーが去ったと知るやすぐさま自分を売り込み、紆余曲折を経つつもあれよあれよと全米ツアーに至る流れのなんとスムーズなことよ。お披露目ライブで後のステージアクションの片鱗を覗かせつつKeep Yourself Aliveを歌い上げる姿にはハラハラしつつもニヤニヤが止まらなかったし、曲の中で地名をいくつもコールすることでツアーの様子を描くくだりはテンポがよすぎて思わず身体を揺らしたくなりました。上り調子で絶好調のこの辺りから既に、すれ違う男の意味深な目線を追う等ベタな伏線をしのばせる演出がとても親切。わたしのような後追い世代も、映画の世界にすんなり入っていけます。

ソロから晩年にかけてのドロドロ期は、孤独と苦悩と身体的苦痛を丁寧に描いているもののストーリー展開を逸脱するほど苛烈なものではなく、きっちり映画的手法に則って手堅くまとめてきたなという印象。ここをもっとヘヴィに作り込んでおけば、メンバーとの和解や厳格な父に認められる瞬間がもっとずっとドラマチックに感じられたのでは…という気もします。クライマックスのライブ・エイドも、もっと胸にぐいぐい迫る描きかたがあったように思う。とは言え、十分すばらしい熱量ではあったのです。それよりもっと、もっともっとと願わずにいられないだけのパワーを感じたことは間違いありません。

フレディ役のラミ・マレックの、どこまでも透き通るかのようなあの目がとても印象的でした。ブライアン・メイ役のグウィリム・リーは一体どこから見つけてきたんだと驚愕するレベルで本人そっくり。ベン・ハーディはちょっと若すぎるかな、と思ったらまさかの91年生まれでした。パンフレットを熟読した上でもう一度観たいな。願わくば爆音で。
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