鋼鉄隊長

ボヘミアン・ラプソディの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.0
TOHOシネマズ梅田にて鑑賞。

【あらすじ】
1970年、イギリス。ボーカルが脱退し解散をも考えるバンドの前に一人の男が現れた。彼こそが後のフレディ・マーキュリーであり、ここから伝説のバンド「クイーン」の物語が始まった…。

 世代を超えて「Queen」は愛されている。来日ライブ、月9ドラマ『プライド』、ハッチポッチステーションでのグッチ裕三の替え歌等々。皆どこかでクイーンを聞いて好きになった。しかしもうフレディ・マーキュリーはいない。色褪せない魅力はあるとはいえ、いつかは過去のバンドになるかもしれない。そんな時代だからこそ、この映画の意義は大きい。
 この作品はフレディ・マーキュリーの生涯を描いた伝記映画としての側面が強いが、はっきり言ってその魅力は弱い。紋切り型に描かれた展開は平凡であり、図書館に並ぶ漫画『世界の偉人』のように小綺麗にまとまりすぎている。同性愛者としての苦悩やエイズに関する描写は、過度に掘り下げないように遠慮しているとも思えた。さらに、クイーンの歴史も淡白なものである。どこを起点にバンドが成功し、苦難の時期はいつだったのか、それをどう乗り越えたのか。全てが曖昧に描かれている。批評家からの酷評を跳ね除けて大成功した1975年の初来日コンサートは、もっと丁寧に描いて欲しかった。楽しみにしていた場面なので、ちょっぴり寂しい。
 しかし肝心の歌は完璧に演出されていた。そもそも近年の劇場音響は、やっとクイーンの魅力を最大限に発揮できる水準に達したと思う。クイーンの歌は映画なのである。だからこそ映画音響との相性が良い。Dolby Atmosの包み込むような音響では『Don’t Stop Me Now』のライブ感が増す。ULTIRAの立体音響を駆使すれば『Bohemian Rhapsody』でのロジャー・テイラーの高音もクリアに聞こえるはず。重低音ウーハー上映なら『地獄へ道づれ』のドラムはより美しく響くだろう。『We Will Rock You』は応援上映で一斉に足踏みしてこそ完成する。クイーンの可能性を引き出したこの映画は、永久にイベント上映されるべき「映画を超越した至高のライブ」だ。
 映画はクイーンをこれからも愛されるバンドに昇華した。
鋼鉄隊長

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