ベルサイユ製麺

ちはやふる ー結びーのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
3.4
“こんなとこで”

地方予選、全く予期せぬ出来事に集中力を欠き苦戦する主人公が、自分に喝を入れるというシーン。流れのなかで、自然に言い放つ。
うん。そうなのだろうね。天才には一般ニンゲンの気持ちなんて分からないのだろう。まあお互い様ですが。
天才で、更に主人公なのだから、彼らの為に物語は進む。記者会見遮って発言しても許させるぜ!主人公。一般ニンゲンの勉強の為の時間を割いて、君の為だけに発言するぜ!イケメン君。
そうでない一般ニンゲンは、モブその①や脇役が貰えれば良い方だから、始終ソフトフォーカスか、インテリアの名前や風貌に因んだ渾名を甘んじて頂戴すれば良い。勿論不細工に決まっておるだろう。

…なんて事は漫画では、特に少女漫画ではしょっちゅうある事なので今更気になりませんでした。
因みに、理解の及ばないレベルの天才を描いた漫画は新井英樹の『SUGAR』及び『RIN』、反対に、平凡な人が生涯体育としての格闘技に取り組む姿を描いた漫画は遠藤浩輝の『オールラウンダー廻』を推薦します。

映画本編は、今作に至っていよいよ自分が原作を読んでいないゾーンに突入しており、見た限りでは(終わり方を除けば)どの辺りがオリジナル要素なのかはよく分からないぐらいだったので、原作の世界観を損ねない脚本なのだと思いました。
“概ね良い”のは大前提として、気になって点を挙げます。
⚪︎畳バーンの音が大きくて毎回ビクッとしてしまう。吊り橋効果狙い?
⚪︎(尺の問題もあり急成長してしまった)主人公達を持ち上げる為に、その他の人物を浅はかな人物のように描いてしまう手法は余り好きではありませんでした。長期連載の実写化に於いて、これは結構根深い問題だと思う。
⚪︎コメディのトーンは若者向け映画に不可欠な要素なのでしょうが、もう少し落ち着いたトーン・現実的な範囲に留めておいた方が見やすいと思う。コレで大笑いがしたい層は少数派なのでは?
○(これはこの手の映画共通ですが)邦画は劇伴がどの作品も同じテイストで酷く陳腐。全て同じロジック。あと画面を白っぽく目脂っぽくする以外の方法で青春感を表現する方法を模索してほしい。アメリカのヤングアダルト物とかはもっと頭使ってやってますよ…。
◎結論出さないのに、恋愛の要素、要る⁇

…と、全体的に割と冷静に見てしまいました。スタート地点の僅かな角度のズレが最終的に大きな誤差を生むように、そもそものこのシリーズへの思い入れの度合いの差が随分大きな評価の差を生んでいるように思えます。


ところで、自分はツタヤで準新作になる前に地上波放送をしてしまった作品は基本的にレビューしないことにしているのですが、今回例外的にわざわざレンタルしてレビューしたのには訳がありまして…。
敬愛する伊集院光さんの朝のラジオのゲストに松岡茉優さんが出演されてまして、これがもう凄かった!
まるで自動生成されるように論旨を途切れなく繋ぎ、時にソリッドな笑いに舵を切ったかと思えば、若干24歳とは思えないような達観も覗かせる松岡さんのトークスキルは、“深夜ラジオの帝王”伊集院をして、「僕、もう割とすぐ深夜辞めるから、その後やって(意訳)」と言わしめるほど…。
で、お二人が興味深い話をしてまして、“屁理屈おばけ”を自認し、ラジオ本番前に図を描き(!)シミュレーションを重ねる(ただしその通りにはしない)という伊集院さんに対して松岡茉優さんが強いシンパシーを抱いていたのですよ。曰く、「考え抜いて染み込みませるから、真っ白になっても出来る(意訳)」のだそうです。わたくし、てっきり松岡さんは何もしなくても“出来てしまう”人なのだと思い込んでいたのでとても意外でした!
更に、天才型の“出来てしまう人”として伊集院さんは“おぎやはぎ”を、松岡茉優さんは“広瀬すず”さんを挙げておられたのです!
おいおい!『ちはやふる』のライバル同士で、しかもどっちかと言えば逆の配役じゃないか!スゲェ気になる!確認したい!!!
…という事で、見てみたんですけどね☺︎
結論から言えば、これじゃ分かんないや…。松岡茉優さんが潜在能力の1割も出してないように見える。刀を抜くどころか、柄に手をかけてもないぐらい。まあ、こんなとこで全力の演技出さないですよね。そもそも冒頭に書いたように、一般ニンゲン(以下)の自分に、天才の質の違いなんて見分けられないのかも…。吾輩の事は、そうさね…“すのこくん”とでも呼んでくれたまえ。
個人的には、共に出演している是枝監督の作品で、怪物同士のメガバトルを期待しますよ!おお、2人がゴジラとキングギドラに見えてきた!