茶一郎

ミスター・ガラスの茶一郎のレビュー・感想・評価

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)
4.1
 シャマランが19年越しで作り上げた「一人ユニバース」で、臆面もなくド直球のストレートをブン投げてきた傑作!いや傑“怪”作!『ミスター・ガラス』!
 本作、一見『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』かなと思ったら、『アンブレイカブル』を通って、最終的には『レディ・イン・ザ・ウォーター』に到着する、これがヒーロー・コミック版『レディ・イン・ザ・ウォーター』なので驚きます。見終わった後の感触は、最初の「スーパーヒーローは実在するか?」という問いが霞むシャマラン印のヒーロー映画でした。

 シャマラン作品は常に、「自分が主人公たり得る物語に気付く物語」を反復していますが、本作も例から外れません。世界に虐げられてきた者が超能力(のようなもの)を得、『ウォッチメン』、『Mr.インクレディブル』、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』同様「誰がその超能力を管理するのか」という問題提起がされ、最後に『アンブレイカブル』で「自分が主人公たり得る物語に気付いた」ある登場人物が、その「物語を作る」結末を迎える。
 これをもって本作『ミスター・ガラス』は、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『アンブレイカブル』を通じて、『レディ・イン・ザ・ウォーター』に到達するのです。(『レディ・イン・ザ・ウォーター』は登場人物たちが、おとぎ話から飛び出した水の精と世界を救うために物語を作る物語である大が100兆個付く傑“怪”作でした。)

 シャマラン作品で登場人物たちを成長させるアクションとして頻出だった「カウンセリング」が、本作では逆の作用をする。シャマラン作品あるあるの逆を行く一方、長編監督デビュー作『翼のない天使』(原題『Wild Awake)から一貫して登場している登場人物が「Awake」する瞬間は、やはり本作でも「Awake」というセリフそのままで登場します。

 何よりも本作で落涙を誘うのは、アイツが作った「物語」が世界に伝播するラスト。本作『ミスター・ガラス』を作るため、自宅を抵当に入れ製作に臨んだシャマラン。無事、製作費はすでに回収し、シャマランはホームレスを回避、皆、お前が「19年ぶりに作って伝播させた物語」を見てるよ。頑張れ!シャマラン!これからも物語を作ってくれ!

 音声はこちらhttps://youtu.be/hL8It-Ywc6g
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