こたつむり

王様の事件手帖のこたつむりのレビュー・感想・評価

王様の事件手帖(2017年製作の映画)
3.2
♪ 僕を飾る宝石がなくなったって
  守り続けたいものがある
  「あの日」灯した このロウソクだけは
  ずっと守り続けていく

コメディ風味のミステリ。
…と伺って観賞したのですが、うーん。本作をミステリと呼んだら、何でもかんでもミステリになってしまう気がします。

大切なのは“謎”と“論理的思考”。
そして、好奇心を刺激する“エッセンス”。本作の場合、前者は奮闘していたと思いますが、後者が圧倒的に不足していました。

何しろ、構造は“時代劇”。
李氏朝鮮の時代、傍流で王となった主人公が命を狙われる物語なので、どことなく『暴れん坊将軍』とかの匂いが漂います(一応「この方を誰と心得る!」的な場面もありましたね)。

しかし、それは枠組みだけの話。
ミステリっぽい時代劇として捉えれば十分に面白い作品です。理科の実験で扱うようなトリックでも舞台は中世ですからね。鷹揚に臨めば良いのです…が。

やはり、物足りなさが先立つのも事実。
頭脳明晰で何事もこなしてしまうスーパーマンの王と、記憶力が抜群だけど頼りない部下の凸凹コンビには頬が弛むんですが…どうしても前のめりになれないのです。

思うに、キャラクターの土台が曖昧なのでしょう。例えば、王が望むものは何なのか。国家が潤うことなのか、自身の後継者を作ることなのか、それとも興味が赴くままに生きているのか…判然としません。

勿論、それらが無くても物語は成立します。
しかし、キャラクターの気持ちに寄り添うためには“輪郭線”がキッチリと描かれていることが必要。血が通っていると実感できなければ、絵に描いた餅に過ぎないのです。

ただ、この辺りは個人の嗜好の範疇。
僕は濃い味の方が好きなんですが、塩加減を自分で調整するなら薄味のほうが良い…なんてこともありますからね。

まあ、そんなわけで。
対象年齢が低めの韓国時代劇。
コメディもミステリも“ふわっとした”風味を感じるだけなので、期待値は低空飛行が原則です。また、楽曲がマーベルっぽいので“勢い”に騙されるのもアリかもしれません。
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