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ゴジラ×メカゴジラののらのレビュー・感想・評価

ゴジラ×メカゴジラ(2002年製作の映画)
2.5
メカゴジラが出てくると、シリーズ末期感が漂うが、本作のメカゴジラは1作目のゴジラの骨格から遺伝子工学などを駆使してつくり上げるというもので、ゴジラシリーズで初めて人類が自力で作り上げたメカゴジラと言える。

今作でのゴジラの位置付けは、1作目以降ゴジラは現れなかったが、モスラなどの怪獣は現れていたという世界で、そこに1作目とは異なる新たなゴジラが現れたという設定で、この突然現れたゴジラと戦うために、人類が初代ゴジラの骨格を回収して作り上げたメカゴジラ機龍がどうやってゴジラに立ち向かうのか?というのがメインの話になる。

今回のメカゴジラが過去のメカゴジラと違うのは稼働時間が決められていて、バッテリーが切れると動けなくなる。劇中でゴジラの咆哮を浴びたメカゴジラが暴走するシーン等で稼働時間の設定が生かされている。この発掘した生物からロボットを作る、稼働時間、そして暴走という設定は完全にエヴァンゲリオンと同じことをやってしまっている。

また話としても劇中で日本は唯一のゴジラ被害国みたいなことを言って、ゴジラを原爆のメタファーとして使われている。しかしその原爆のメタファーであるゴジラを倒すために、そのゴジラから作られたメカゴジラで立ち向かうというのは何ともシュールで言動不一致な展開と言わざるを得ない。その結果ゴジラの襲来を通して何を言いたいのかが良くわからなくなっている。

映像的にはミニチュアの合成など全体的に良いし、ゴジラが八景島に上陸する際の遠景も映像的に非常に良い。また動きが少なかった1993年版のメカゴジラと違い、今作のメカゴジラは比較的可動域も広く接近戦も行えるようになっている。

また機龍が暴走して街を破壊する描写も、迫力があって良い。そして本作で一番良い点はゴジラや機龍の暴走によって避難を強いられたり負傷した人を描いている部分で、単にゴジラをやっつけろだけでなく、こういった負の側面を映画いているのは好感が持てる。

ただこの映画欠点として上映時間の短さからくる説明不足がある。釈由美子と宅麻伸親子の話を入れ込むには時間的に無理がある。そもそも釈由美子と宅麻伸という組み合わせ自体に無理があるし、子どもを入れることで、観客の子ども達の感情移入を促したいのであれば、別に宅麻伸に恋愛要素を入れる必要はない。そのため短い上映時間の中での取捨選択に失敗している印象をうける。

結論として映像的には悪くないものの、メカゴジラが遠隔操作という設定なのでゴジラとの対決に緊張感がない。またゴジラ被害国の日本が、そのゴジラからメカゴジラを作るというのは核の平和利用と言ったメタファーに思わせておいて、その後その件についての言及がないため結果的に何が言いたいのか分からない映画になってしまっている。
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