芋けんぴ

ユー・ガット・メールの芋けんぴのネタバレレビュー・内容・結末

ユー・ガット・メール(1998年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ニューヨークで祖母の代から続く児童書専門店を営むヒロインと、近所に進出した値引き販売の大型書店を経営する御曹司のラブストーリー……なんだけど、ちょっと凄いのがヒロインの店が潰れてしまうという展開。

恋愛模様についてはものすごく楽観的な着地なんだけど、それ以外がビターでシビア。

ハイライトは自分の店が潰れたあとで初めてヒロインが商売敵の店を訪れるシーン。あれほどいがみ合い毛嫌いしてた男の店でヒロインはたくさんのお客さんの笑顔やくつろぎの時間を目にする。そして、肝心の児童書コーナーで子供たちが楽しげに本を読み、親しんでいる姿を見て、「負けたわ……」と言わんばかりに切なげな笑みをこぼす。

大事なのは店じゃなく、子どもたちが本に触れる場所を守ること。御曹司はこの街からヒロインの店は奪ったかもしれないが、子どもたちの場所は奪わなかった。

完敗して子ども向けの椅子に座っているとお客さんからの本の問い合わせを受け困っている店員を目にする。児童書を愛し、その知識に長けていたヒロインは咄嗟に客が探している本のタイトルを言いあてる。

そんな彼女の姿をふと遠くから見かける御曹司。彼の中にヒロインの書店を潰してしまったという罪悪感が残る。

けれど潰えた本屋はハリウッド式に蘇ったりしない。

ラブコメという大きな嘘にまぶしたシビアな現実。こういう真摯な作りは大好きです。
芋けんぴ

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