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英国総督 最後の家のmaverickのレビュー・感想・評価

英国総督 最後の家(2017年製作の映画)
4.3
2017年のイギリス・インドの合作映画。監督は『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ。


感動系の作品かなと思いきや、何ともヘビーな内容であった。インドの独立がどのような困難の中で行われたのかを知ることが出来る。ドラマ仕立てで頭にすんなり入る。けれどその衝撃度は半端ない。インドの独立は多くの犠牲の上で成り立っている。

1947年、イギリスは300年間支配してきたインドの主権移譲を決定した。独立を円滑に行うべく、最後のインド総督としてルイス・マウントバッテンが着任する。本作ではインドへの愛に溢れた人物として描かれており、使用人にもフランクに接したりと人柄の良さをうかがわせる。彼の妻も娘も同様で、一家揃ってインドの平和的な独立を願う。

前半こそ新しい総督一家と使用人たちとの関係性が微笑ましいが、中盤からは一気にシリアス性を増す。総督官邸の中は平和な時が流れているが、外の町では暴動によって多くの国民が犠牲になっている。官邸で働いている使用人たちにも動揺が広がり、意見の違いによる対立を引き起こす。穏便な解決法などもはやないのだと痛感する。

総督であるルイス・マウントバッテンとその家族。そこに仕える新米の使用人であるジート・クマールと、彼の想い人であるアーリア。本作はこの立場の違う二組を軸にした物語となっており、両方の視点からインドの独立をリアルに体感出来る。良く出来た脚本だ。

英国総督ルイス・マウントバッテンを演じるのは『ダウントン・アビー』シリーズのヒュー・ボネヴィル。彼の妻を演じるのは『X-ファイル』のジリアン・アンダーソン。『ハリー・ポッター』シリーズのマイケル・ガンボンも出演しており、重厚感が半端ない。『マダム・マロリーと魔法のスパイス』のマニシュ・ダヤルを始めとしたインド側のキャストも全員魅力的で目を引く。マハトマ・ガンディーは激似で驚いた。


最後に語られる事実にびっくり。こうした歴史を経て、今のインドがある。発展が著しく、今や映画産業ではハリウッドにも匹敵するほどに成長した。驚くべきことだ。だが対立は未だ続くインドとパキスタンではある。なぜいがみ合うのか、それも本作で知ることが出来る。激動の時代に巻き込まれるジートとアーリアの二人が不憫でならなかった。この二人のような悲劇のドラマがいくつもあったに違いない。衝撃的な作品で強く印象に残った。
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