グラビティボルト

女は二度決断するのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
3.5
初ファティ・アキン。
息子と夫を理不尽な爆弾テロで喪ったダイアン・クルーガーの内面がブレる、ブレる。
容疑者をジャッジする裁判シーンにおける、デ・パルマっぽい分割画面やシャローフォーカスは機能してるか微妙だが、
雨、出血、バスタブと水のイメージを刻む演出は良好。

家族ビデオを切れ目に挿入した、3つの章立ても、イマイチ機能してるか解らないんだけど、3章目でダイアン・クルーガーが観るビデオが
海の向こうから夫と息子に呼び掛けられる画である事がラストに起こす行動の直前、クルーガーが曇天の海を見詰めるショットと重なるんだと思う。

裁判シーンは、早口で捲し立てる原告、被告側弁護士は面白かった。
あと、随所の長回しが効果的。
特にギリシャでダイアン・クルーガーが容疑者カップルを発見したあと売店から出る件の妙な長回しは、
いつ何処で死んでも可怪しくない異様な緊張感を帯びる。

ダイアン・クルーガー演じる被害者遺族がそもそもチンピラの出だからか、悲惨な事件を描いた作品でも
妙にウェットにならないのが独特。
特に3章目の中盤は、独りで行動する場面が多いのもあってほぼサイレント的に「決断」が進行していく。
ここがちゃんとラストの余韻に活きる。

一度は手首から血を流しながらバスタブに沈もうとしたダイアン・クルーガーが被疑者逮捕で再び浮上し、ラストショットも爆炎と共に上昇ショットで終わる。
こういう、シナリオからショットを起こしたような場面は巧くハマっていると思う。
画面をデ・パルマみたいにデコレーションすると弱い。