ジャン黒糖

ヴェノムのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

ヴェノム(2018年製作の映画)
3.2
サム・ライミ版『スパイダーマン3』のヴィランとして登場したことでも有名なヴェノムを主人公に、『ゾンビランド』シリーズのルーベン・フライシャー監督、トム・ハーディ主演で描く。

本作は、元々は上記サム・ライミ版での登場を受け、ヴェノム自身を主人公とするスピンオフ構想から始まったらしく、実は本作公開までの道のりは長い。
その後も、マーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』とのクロスオーバーが企画されるも、興行的な失敗により企画は頓挫(ただ個人的にはこのシリーズの2作目がすごく好き)、さらには『キャプテン・アメリカ シビルウォー』にていよいよ本家?MCUにソニーがパートナーシップによって合流した。
このような背景もふまえ『ヴェノム』はおよそ10年越しの実現、という訳だそうだ。
それも、今後ソニーが構想するユニバースに今後合流する可能性も鑑みて、実際の制作は当初想定よりレーティング指定を下げて作られた。
(ちなみにそのユニバースの名前はソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター。名前長すぎて正直明日試験に出ると言われても思い出せない自信ある)

このような、作られるまでに映画会社/制作陣によるパワーゲーム・紆余曲折を経た映画は往々にして微妙な作品が多い印象がある。
長い前置きをしてしまったが、本作もその例外でない。。。

まずヴェノムと、彼に憑かれる主人公エディの設定がフワフワしていたのがちょっぴり残念。
"お互い負け犬同士気が合う"とのことだが、正直ヴェノムはどの辺が負け犬なのか(そもそもどんな生命体組織で、そのなかでヴェノムはどんな位置付けなのか)わからないし、負け犬というだけで共通するならエディである必要もない。
ど根性ガエル的な、一体となったバディ感を愛でるのが楽しみ方なのかもしれないが、もっとダークなキャラクター像を想像していたばっかりにちょっと乗り切れなかった。

ちなみに、この主人公エディに関しては、なぜ元恋人のアンと再び良い関係に修復しかけるのか、その辺りもキャラの深堀りがあまりない分、よくわからない。
ちょっとそこは長いエンドロールを削ってでももう少しストーリーの掘り下げをしてもよかったと思う。

また、今後のユニバース合流も視野に入れての描写が、別にグロを期待して観てる訳ではないけど、この映画の印象を全体的に薄味映画方向に推し進めているように見える。

そのため、キャラの掘り下げは甘く、ストーリー・描写は薄味なため、ヴェノムというキャラの強さに比して作品としてはあまり印象に残らない1本かもしれない。

ちなみに、ラストまで観るとルーベン・フライシャー監督のある作品に出ている役者が登場するのにびっくりした。
『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグは『ピザボーイ』、エマ・ストーンは『L.A.ギャングストーリー』と、同監督作に出演する人はその後別の作品でも起用される説が、本作でも検証されたのがなんともニヤっとしてしまった。
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