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それからのmaverickのレビュー・感想・評価

それから(2017年製作の映画)
4.0
2017年の韓国映画。監督はホン・サンス、主演女優はキム・ミニ。第70回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールにノミネートした。


ホン・サンス監督は国内外で高い評価を受ける芸術系監督である。巨匠とも呼ばれており、そのことに自信を持ってか本作は全編モノクロで撮影されている。モノクロ作品だと期待のハードルも上がるが、名作や傑作と言うほどの良さは感じず。ただ面白いのは、本作が不倫をするカップルを描いているのではなく、それに巻き込まれる人物を主軸としている点だ。キム・ミニが演じる女性は今日が初出勤だというのに、殴り込んで来た奥さんに不倫相手だと勘違いされてしまう。そこからのこの女性の心情の変化が面白く、あり得ないような展開になってゆく。あり得ないような展開なのに、とてもリアルだと感じる。男にとって都合の良い話に見えて、この監督は女性の心理というものをよく分かっているのだろう。主人公の女性が取る行動に、何だか納得してしまう。

不倫をしている社長役のクォン・ヘヒョの演技が、もっともらしくてとても良い。成功していて自信に満ちているけど、どこか情けなさも漂う男である。中年男の色気も漂い、女性に対してフランクなのでモテるのも分かる。なんだかんだで女性もこういう人を選んでしまうのよね、と。クォン・ヘヒョは、ドラマ『冬のソナタ』の上司役で知られる人。味があって素敵な俳優だ。


モノクロ作品である意味というのはそれほど感じず。だが味わい深い作品ではあった。奥さんが殴り込んで来た時の修羅場の感じはすごくリアリティあったけど、監督の体験が反映されているのだろうか。そんな余計なことをつい考えてしまったよ(笑)。
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