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ジュピターズ・ムーンのreifのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
4.2
事情:愛するジャスティン・カーゼル監督(新作はまだですか)の弟君ジェド・カーゼルが音楽をやってます。先にサントラ買い、開けてみるまでハンガリー映画とも知らぬ準新作。タイトルとジャケからチープな宇宙旅行サイファイだろう、の予想を裏切る佳作でした。観る人も少ないでしょうから紹介がてら、掟破りのネタバレ気味でつらつら書いてみます。

タイトル解題:ジュピターズムーン、木星の最大の月の名前はエウロパ=Europe で、ヨーロッパを目指す不法移民のお話なのでした。おしゃれなタイトルにびっくりしたな。シリア人が流れ込むのはハンガリー。不法移民収容所のカオスを初めて見た。

カメラワーク:長回しと空撮で変わっていて見入る。長回しは手垢がついてしまったのか「飽きた」という評を聞くことがありますが、自分は『バードマン』から好き。カメラが回っている間、役者のテンションが維持される一発勝負が快感で。映画を演劇に近づける手法だと思う。愛するネメシュ・ラースロー監督が『サウルの息子』でハンガリー映画のトレンドを決定してしまった可能性について考えたり。収容所ものでテーマも似ている。三月に新作が来ますよー、楽しみだよ。

父さん:人名が全然入らず顔の見分けがつかず父さんが「謎」になってしまった…。父さんは最初に川で射殺されて「浮いてた」Body ですよね。空飛ぶ少年(名前)はそれを知らず、東駅で会うテロリストは誰なん?? 父さん? そんで父子でタトゥー分けたりする文化なのシリア? 恋人でしょ?? 冒頭の肩の抱き方は肉体関係ある感じで、「父さん」と呼んでびっくりしたんだ。大工でテロリスト。わからん

空飛ぶ少年:ごめん名前が入らなかった。父が大工の奇跡の人といえばナザレのイエス。この人を映すカメラが凄いの! 空撮で三次元にぐるんぐるん回る、酔う。かなり上まで釣られてたから命知らずの役者さんですね。何回浮いたことか。これ見るだけで面白い。

シュテルン医師:貧弱な独語知識によるとシュテルンは「星」。医師カードを盾に不法行為をやり放題のダーティな主人公、好きだぜ。現場の人は判断が早い。少年を待たせるたびに逃げられるのは学習しろと思いました。ただの金ヅルだった少年との関係がバディとなり、赦しとなる。王道。もう一人、移民局の刑事も汚れていて、どん底の男同士のやりとりがいいんですわ。

話の筋が掴めてないくせに良かった点がたくさん。目的のジェド・カーゼルがやると、どんな映画も硬質になってよいです。オーストラリア人がハンガリー映画の音楽を手がける映画業界のインターナショナルな広がりが不思議。

総括:東欧映画は面白い

情弱で情報が入ってこなくて悲しい。きっとまだ知らぬ良作がザクザクしているんだろう!泣
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