さよこ

ビューティフル・デイのさよこのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.5
【演出×脚本×音楽×音楽×音楽!】

新しいヒーローの誕生だと思った。カナヅチ一つで次々と人を殺めているのに、時折その表情はどこかあどけなく、少年ぽさを感じる。不思議だ。ただの小太りなヒゲのおじさんなのに。なんでこんなにも可愛く思えるんだろう。

殺し屋稼業から仕事を終えて、ママと一緒に家族団らんしてる。ママのことが大好きなのが伝わるから、その後の展開に胸を打たれる。

彼は、ある出来事がきっかけで見た目とは裏腹に心の一部は成長が止まっちゃったみたいに子供のままだ。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱え、定期的に過去の出来事を物理的に再現することで心のバランスを保っているんだろう。劇中では、過去の具体的なエピソードをセリフでは教えてくれない。言語化できない不安な気持ち。きっと監督は、主人公の「感覚的な部分」を伝えたかったんだと思う。

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この映画の好きなところはなんと言っても音楽。単調なメロディが変調する瞬間がスクリーンに映し出される状況に見事にマッチしてる。ときにはピアノでメロウに、ときにはレトロなポップサウンド。感情を表すノイズ。街の喧騒を表す音の立体感。こんなに演出と脚本を際立たせる音楽の使い方は見たことがない。左右上下の音を自在に操っているので、この作品はぜひ劇場で観てほしい。

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エンディングの白昼夢も好き。
エンドロールでタイトル「ビューティフル・ディ」の意味を考える。
さよこ

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