このレビューはネタバレを含みます
仰角で低い位置から見た歪んだ世界(女王目線)、ウィップパン、ド派手な衣装と宮廷生活。自ら入る泥風呂。現代的なFワード連発の宮廷コメディ。
序盤のドタドタと走り回るようなカメラワークとテンポの良い会話が、宮廷の空気とのギャップを生んでいて、特に面白かった。自然光を生かした昼とロウソクが頼りの夜。
最大の魅力はアン王女(オリヴィア・コールマン)。人間臭い孤独と狂いっぷりが素晴らしい。ウサギの名前のくだりも良かった。英国女王でありながらその辺のスーパーにいそうでもある存在感。
馬車から蹴落とされるアヴィゲイル(エマ・ストーン)と落馬するサラ(レイチェル・ワイズ)。英仏、与野党の戦いは放ったらかしで、この2人の権力争いに絞って描く。自分のために行動しているのに和平派として国を守る事になるアヴィゲイルと、女王に尽くしているのに国を疲弊させる戦争を続けようとするサラ。この皮肉も面白い。3人とも嘔吐と共に没落する。
中盤までサラとアヴィゲイルの緊張関係が高まりつつ、アン女王の人間味も見えてくる。形勢が決まる後半から勢いはやや失速。特に眼帯サラのビジュアルががめちゃくちゃカッコ良かっただけに、もうひと暴れして欲しかった。ラストは文句無し。
初めてヨルゴス・ランティモス監督作を見たが、信用できる人だと思った。女王がアヴィゲイルとダンスしだす場面に、サラとアヴィゲイル主導権争いの射撃対決の音が被さる所とか。
ラストも、女王の表情のアップでバシッと暗転すれば十分カッコいいのに、ウサギもわわわ〜んを突っ込んでくる。どうしてもこうやって終わらせたかったんだろうな、という意図を感じて好きになった。ノーランだったら絶対顔アップからの暗転でドヤ顔して終わらせてるだろうなと思った(とばっちり)。78点。