しゅん

希望のかなたのしゅんのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.5
この映画を観て一番心癒される人間のカテゴリーがあるとしたら、それは紛争地域の難民でも人道主義者でもましてや日本人でもなく、愛煙家である。この映画ではタバコ、そしてそれに触れる指先が人間関係の確かさを匿う。他人のタバコに火を灯すことは親愛の証となる。だからこそ、逆に絆が絶たれるときには、外された結婚指輪が灰皿に押し付けられる。海辺に揺れるカーゴ船から黒ずんで現れたシリア人の男を包むのはギターの音であり、その時アップで映されるのはギタリストの指先だった。あるいはポーカーゲームの時も、チップを動かす指が映されている。大事なのは常に指先だ。そして、最後の一服。僕自身は全く吸わないが、指先とあの有害な嗜好品のランデブーには何度も励まされた。

カウリスマキらしい無表情のユーモアと濃密は色合いの美術は今回も健在。海の映像が不穏なのは『海が燃えている』にも共通で、やはり難民問題が影を落としているのか。カーリドの民族楽器独奏も素晴らしかったです。
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