ベルサイユ製麺

希望のかなたのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.5
観終わって、しばらくして、なんだか急に涙が出てきてしょうがなくなってしまった。
細々とディテールに触れた下書きも全部消した。

どうしても、どうやっても自分は真っ当に生きられない。直ぐズルをする。
困っている人を受け止められる余裕が無い。優しく距離をとってあげられる機転が利かない。
いざという局面を巧みに避ける。勝負度胸が無い。損をすると分かっていて、なおルールに従えるようなタフさが無い。真っ当さが、優しさが分からない。
世捨て人の様なフリをして、いつか何処からか肋の間にナイフが滑り込んできて、怠い生活からアガリになれば良いやと思っている。それすら本心か分からない。あまりに長くそんな風なので、もう何が分からないのかも分からない。
自分は虚無だ。信念なんて当然ない。
世界が良くなる為にも、自分にだけ都合良く世界を捻じ曲げる為にも闘えない。自分みたいなのが隙間に蔓延り、世界が動くのを堰き止めている。そんなこんなできっとこの国はこんなにグロテスクになった。本当に最悪。何のことはない。自分が一番グロかったのだ。

優しい光が、さりげないリレーションシップが、心を振動させる力強くも素朴な旋律が、物言わぬ優しさが、暖かいスープが、貴方の背中をそっと押す。希望としか言いようのない一歩を促す。

今まで自分はこの力を感じられずに生きてしまっていたんだ。