イライライジャ

ラングーンのイライライジャのレビュー・感想・評価

ラングーン(2017年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦中のインドの位置付けなんて知らなかったけどかなり興味深い。インドはイギリスの植民地支配下ゆえに第二次世界大戦は自動的に連合国側(イギリス側)として参戦させられてたらしいけど、如何せんガンジーを主としたインド人たちはイギリスに対し「まず独立させてくれ!」となったわけ。「独立を認めないならばイギリス人は国から出ていけ!」という発想に至り、劇中序盤でもあったインド独立運動の戦士スバス・チャンドラ・ボースを筆頭に日本軍と協力して“インドを立ち去れ運動”が行われたらしい。INA(Indian National Army=インド国民軍)はその際にインド独立とインド人解放のために作られた組織。
インドは第二次世界大戦よりも、その後独立する際に宗教でインドとパキスタンを別の国として独立させてしまった、のちの印パ戦争の方が重大ではあるので本作ではあまり知識をいらず楽しめるのが優しい。
タイトルのラングーンはミャンマーのヤンゴンの旧名称。

で本編についてだけど、
この時代は第二次世界大戦のせいで映画業界も低迷していて、その中でも一際活動していたのがミス・ジュリア。本作の主役。同じく俳優のルスィは婚約者。
兵士たちの慰問のため列車で移動、ジュリアにも護衛としてマリク伍長をつけるのだが、これが彼女にとって人生の始まりであり終わりである。日本軍の攻撃により兵士たちはバラバラになってしまい、ジュリアとマリクは森で二人(+日本軍の一人)で行動となる。
過酷な道中を共にした2人は次第に心を通わせていき、遂に取っ組み合いの後に泥まみれになりながらのキスをする。
このシーンが久しぶりにキュンキュン止まらなくて、私の中ではインド映画キュンキュンベストの上位にランクインされた。その後の別れとシャーヒドの表情まで全てがドキドキして息が出来なかった。
ここまでが前半。

後半はそんな2人の距離感に薄々気づいてる婚約者ルスィとの三角関係や、裏切り。
ただのラブストーリーではなく第二次世界大戦という大きな隔たりがあるのでそんな上手くいくはずもない。でも愛は止まらない。それが悲劇にも繋がる。


ボリウッド界の中でも極めてダンスが上手なシャーヒド・カプールを踊れないキャラとして一切踊らせなかったのは正解だった。さすが「Haider」の監督だけあり、ダンスやアクション以外でもシャーヒドを魅力的かつ渋く男らしく写してくれている。ルスィ役サイフ・アリー・カーンも絶妙な悪役であり、けれども高貴な雰囲気を漂わせていていつもの彼より素晴らしかった。
そして何といってもサントラが良いに尽きる。
音楽シーンがインド映画のダンスというよりミュージカルの様な導入や演出で不思議な感覚になる。