あなぐらむ

方舟の女たちのあなぐらむのレビュー・感想・評価

方舟の女たち(2016年製作の映画)
4.0
(ピンク映画=上野オークラ公開版「痴漢電車 マン淫夢ごこち」を鑑賞)
これがホントの"痴漢電車"。タイトルだけが冠されたものでなく、正面から痴漢というピンク映画ならではの素材に向かい、城定監督得意の同時間軸-並行進行ドラマに視線映画の味わいまで加味、なんと「さそり」までまぶした娯楽映画の粋。
(電車とさそりについては、東映の「女囚さそり けもの部屋」を参照)

一番手に希島あいりというスター級を据え、芽衣子帽を被らせながら清水大敬とホームレスファックさせ、実質主演となる竹内真琴に眼鏡っ子をやらせて麻木貴仁の視線ドラマでハートフルも感じさせつつ、松井理子刑事もちゃんと見応えある絡み。城定監督の作劇、恐るべし。久保Pの芝居も見事。

「悦楽交差点」の単視点を複数視点に進める事でより「バンテージ・ポイント」化させつつ現代的な「多様な」群像女子ドラマ。女優達にモノローグという形でピンク映画伝統のアフレコの洗礼と伝承を行う、ピンク映画を死なさない試み。
竹内真琴が読む小説で太宰の「女生徒」が引用されて効果をあげている。彼女にぴったりな本を図書館長は薦めたわけだ。城定監督は「汗ばむ美乳妻」でもゲーテの引用を冒頭に持ってきたが、作品の格を上げるこういう一匙と、さそりみたいな遊び心の按配は重要だ。
助演に「悦楽交差点」の水準を引き上げた佐倉萌、いまやインディーズ映画になくてはならない女優・しじみ(@ギャルモードがかわいい)、男優では清水大敬叔父貴も役得の一発を見せ作品を安定させる。銀行と警察署も同じセットでちゃんと違う見映えにする美術への気配り。