Soshi

少女邂逅のSoshiのレビュー・感想・評価

少女邂逅(2017年製作の映画)
3.5
蚕は小さな箱で育てられ、隣の繭とは仕切りで隔離される。これは、蚕同士の糸が絡まない様にするためだ。さらに、繭となった蚕から糸を取り出すために、熱湯に入れられる。極め付けは、成虫となった蚕は羽はあるが飛べず、しかもたった数日しか生きられない。本作はこの蚕という生き物無しでは語ることができない。蚕の儚さを擬人化させ、少女の成長に繋げた本作は、理解するのに難しいが、とても感慨深い作品だった。

【あらすじ】
蚕にツムギと名前を付け、大切に飼っていたが、同級生のいじめにより、森に放たれてしまった。いじめられていた彼女は森である女性に助けられるのであった。次の日クラスに来た転校生がその女性だった。しかも名前がツムギ。何かの縁を感じ、主人公はツムギが気になったが、いじめられて声が出ないなった彼女は、遠くから見ているだけしかできなかった…

タイトルに付けられた「邂逅」とは「思いがけず出会う」という意味である。
「ある人と何らかの接点を持つ確率は24万分の1。友人と出会える確率は2億4千万分の1。親友と出会える確率は24億分の1。」というセリフは邂逅の尊さを物語っている。
また、「虫には痛覚がない。寿命が短いから。痛みを覚えたとしても意味がない。でもあなたは痛みを感じる。生きる価値があるのだ。」というセリフもグッと来た。

いじめを受け、声を出せなくなっていたが、転校生のツムギとの邂逅により、だんだん話せるようになったこと。空気のようにただそこにいるだけだったが、クラスで人気者のツムギのおかげでクラスに居場所ができたこと。自分の意見を大人に言えるようになったこと。このように主人公がツムギと出会い得たものは大きいが、彼女が成長していくにつれて、また別の大変さを味わうことになる。相手に合わせること。相手の感情を受け入れ言葉を選んで話すこと。友人と別れる悲しさ。友達との約束を守らなければならないこと。これまでは逃げて逃げて楽な箱の隅で息をしていた主人公が、ツムギとの出会いにより、蚕が繭になり蛾と成長する様な大きな変容ぶりを見せてもらった。
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