人工生命体が住む地下世界という魅力的な世界観。独創的なヴィジュアルイメージ。可愛さとユーモア、グロテスクさを共存させた印象的なキャラクターデザイン。クレイアニメという極めて手間のかかる手法でこれほどの作品をほぼ独力で創り上げた堀貴秀監督には頭が下がる。人形が動き出す不思議さ。クレイアニメは原初的な映像のマジックを最も感じさせてくれる手法であり問答無用で惹きつけられてしまう。この作品の動きは極めてスムーズでまさに物体に生命を吹き込んでいてワクワクした。一方、ストーリー的にはやや単調さを感じたのも事実だ。場面場面は素晴らしいのだが101分の長尺の物語を貫く芯が無いように思った。一つ一つのエピソードを全体の中でどのように位置付けて全体を構成するのか。物語の緩急をもっと付けたら良かったのではないかと思った。「長編＝長くなった短編」という訳ではないという事が改めて分かった。本来、クレイアニメはその手間を含めて短編に向いた手法であり、堀貴秀監督の資質も短編作家なのだろう。とはいえ、この魅力的な世界に潜り込む体験は喜びであり、104分の時間を費やす価値は充分にある。
