茶一郎

シンプル・フェイバーの茶一郎のレビュー・感想・評価

シンプル・フェイバー(2018年製作の映画)
3.7
 アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーがスクリーンを支配する、世界最高峰の眼福を誇る映画『シンプル・フェイバー』。
 主演2人と彼女たちのファッションが光り輝く豪華絢爛な映画である一方、「エミリー(ブレイク・ライブリー)の失踪」を観客に向かって話すステファニー(アナ・ケンドリック)から始まる冒頭は『深夜の告白』の現代版のようで、実は本作が過去の名作「ファム・ファタール(魔性の女)モノ」におけるその女性に誘惑される「男」を「専業主婦」に代えた「もし専業主婦がファム・ファタールに誘惑されたら」映画だったので驚きます。

 動画レビューはこちら https://www.youtube.com/watch?v=agDkqx5ni7E&

 まさに、この作劇において「男」を「女性」に代えた世界というのが、本作の監督ポール・フェイグの映画世界。
 地元女性警官と女性FBI捜査官がタッグを組む『デンジャラス・バディ』は、アツい男が事件解決を経て友情を深める警官バディモノを女性同士に置き換えた作品でした。また『ゴーストバスターズ』のリブート版『ゴーストバスターズ』(2016)もリブート前の男性お化け退治屋を全て女性に置き換えたという事で、女性差別的なネットユーザーが出演者のSNSを荒らすという騒動が起きるほどに、男を女性に代えた作品でした。

 そのようなポール・フェイグ監督の新作である『シンプル・フェイバー』も、今まで男ばかりを誘惑してきたファム・ファタールが女性を誘惑するという「男」を「女性」に代えた紛れもないポール・フェイグ監督の作家性を押し出した作品なのです。(その作家性が真剣なサスペンスミステリーとは食い合わせが悪く、ポール・フェイグらしい役者のポテンシャルに依存したギャグが唐突に挿入されるのはご愛嬌ということで)
茶一郎

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