塩辛亭ショッパイ

桜桃の味の塩辛亭ショッパイのネタバレレビュー・内容・結末

桜桃の味(1997年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 シュールなコントが売りで、一部のお笑いファンに熱狂的な支持を得ている、ライブを中心に活躍するお笑い芸人が作った映像作品、ような作品。

 主演のおっさん、顔がまず怖い(都市伝説にある「夢に出てくる男 This man」にやや似)くせに、表情が変わらなすぎるので、みんなちょっと距離を置くのは必然だと思う。引くほどの質問攻めや、〝依頼したい仕事〟の内容をやたらと引伸ばして不気味感を増長させていてる点もしかり、初対面の人とのコミュニケーションでやっちゃいけないリストがあるとしたらかなりの項目にチェックが入るほどの怒涛のやり取りをみせる。反面教師にすべき逆教則ビデオだ。
この作品で一番共感できるのは最初に車に乗せられ、走って逃げ出した青年にほかならない。

 ところで不気味なおっさんが、何かと人を車に乗せたがる理由が、「睡眠薬飲んで穴の中で一晩過ごすので、朝に来てもらって起きてなかったら埋めてほしい」とのことらしい。そんなお願い聞いた事ないのだが、どうだろうか。
 なぜ穴で死にたがるのか、なぜそこにある穴を選んだのか、なぜ穴が意外なほど浅かったのか。というか頼まれた人も死体遺棄罪に問われてしまうのではないか。
自殺の理由が特になんだかわからないという点もおっさんに奥行きを与えている。そしてなにより自殺なら1人でもできるのに、誰かに協力を求めるあたりに人間味が溢れている。

 そのかまってちゃん精神に〝萌え〟を禁じえないところだが、その真意を推し量るに、きっと彼は誰かに自殺を止めてほしかったんじゃないだろうか。口では死にたいと言いつつ、何気ない言動にに生への執着が滲んではいないか。コントではなく、立派な人間賛歌だと気づくまでにだいぶ時間がかかってしまいました、すいません。
塩辛亭ショッパイ

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