ジャン黒糖

クワイエット・プレイスのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
4.0
手に汗握ったー!!!!
静寂と唐突なショッキングシーンの絶妙なバランス、90分弱という無駄のない観やすさ、伏線の巧みな回収ぶり、エミリー・ブラントの美しさカッコよさ、どれとっても良かった!!

【物語】
音に反応して襲い掛かる”あいつら”が現れてから1年強。
わずかな音も許されない厳しい世界で、アボット一家は手話を使い、道に砂を敷いて裸足で歩くなど、厳戒態勢で暮らしていた。
ある日、家族を守ってきた身重の母親イヴリンの産後生活を思いやって父親のリーは息子マーカスを食料確保のため外の世界に連れていく。弱気のマーカスに反して強気の娘、リーガンはこれに連れてってもらえない苛立ちから、聴覚障害でありながら一人きりで家を出ていく。そんなとき、イヴリンの破水が訪れ…。

【感想】
前々から観よう観よう思っていたものの、私の妻がホラーが苦手でなかなか家で一人、観る機会を逃していた本作。
いやー、面白かった!!

監督脚本を務め主人公イヴリンの夫役も務めたジョン・クラシンスキー監督の手際がとにかく痛快で面白かった!
例えば、あたおかなおじいさんが登場する場面。
彼のびっくりするような登場とその顛末に、一見、ただの”ホラー映画あるある”なアトラクション描写程度に思って観ていたら終盤、まさかこの変なおじいさんの描写が、とある人物と重なって見えて、よもやめちゃくちゃ感動する場面に繋がるとは…泣くー!!!

また、父親のリーが、いずれ妻のイヴリンが出産したら家族みんなで支えていかなければいけないからといって息子マーカスを食糧確保のため危険な外の世界へ連れて行く場面。
連れて行った先で滝をマーカスに見せてリーは「滝の音でかき消されるから声出しても大丈夫だよ」という。
この場面も、中盤最大の山場であるイヴリンのとある場面で息子マーカスの成長と重ねて伏線回収されて、めちゃくちゃ盛り上がる。
この山場で描かれる、溜めに溜めた末のイヴリンの絶叫、とにかく迫力が凄かった。
いやー、この一連はぜひとも映画館で観たかった…!

ちなみに、この最大の山場を越えた直後、ガラスにとある人物の手がバンっ!!って現れる場面はあまり意味のない”ホラー映画あるある”演出すぎて、こういったディテールも、ホラー映画というよりはアトラクション的で思わずびくっ!!ってなったし、さすがにちょっと笑ってしまった笑

他にも、お姉ちゃんリーガンの聴覚障害をめぐるラストの盛り上がりは、『インクレディブル・ファミリー』的というか、いわゆる"デコボコ一家で困難に立ち向かう"ファミリー映画の王道的でテンションが上がった。

このラスト、私自身最初からイヴリンに対し思っていた「いや、音を立てたら即死の世界で普通子供を生もうとするかね」というツッコミに対し、「いやいや、こんな抑圧された世界だからこそ、それでも私たちは生きる希望を持って生きて行くんだよ!」という意志の表れでもあり、それは同時にリーガンのハンディキャップを乗り越える成長でもある。
そんなめちゃくちゃ盛り上がったところでポーズを決めた瞬間、暗転してエンドロール!!ちょ、カッコよすぎません!??
めちゃくちゃテンション上がったわ!

もうとにかくこの場面でのエミリー・ブラントがかっこよかった!!
さすがは夫ジョン・クラシンスキーが夫役も監督も務めただけあって、エミリー・ブラント史上、一番綺麗だし一番カッコよく撮れたんじゃない?!


とはいえ、私自身いままさに子育て真っ最中の身からすると、赤ちゃんが軽んじられる・都合よくおとなしい描写は、結局”音を立てたら即死”の世界における最大の難所的役割でしか機能していないようで気になったし、他にもこの映画自体、"あいつら"にバレてしまう音の境界線が曖昧で、全体としてはツッコミ所の多い映画ではある。
ただ、とにかく観ていて終始ハラハラするし、上述のとおり様々な描写がのちに伏線回収されていく映画的手際の良さ、低予算とはいえハリウッド映画にしては異例なほどセリフもなく、90分弱というタイトさに納める手際の良さ、など、娯楽映画として観ていてとても満足度の高い1本だった。
ジャン黒糖

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