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ヴィクトリア女王 最期の秘密のmaverickのレビュー・感想・評価

4.5
ヴィクトリア女王には心を許したインド人青年の従者がいた。事実を基にした、壮大で感動的な愛の物語。インド人の従者として英国にやってきたアヴドゥルは、記念式典の場で女王の目に止まる。彼の温かみのある人間性と、知識の豊かさに女王は心を開く。アヴドゥルも、身分の違いに関係なく、寛大に接してくれる女王に心奪われてゆく。この2人の関係性が美しく、観ていて心が洗われる。互いに優しさと敬意をもって接し、お互いから学べ、喜びを共に出来る関係性。これこそ理想とする人と人との関係性なのではないだろうか。ちなみにこれから観る人で、本作を女王とインド人の青年が愛しあって禁断の関係になっちゃう映画と勘違いしている人がいるかもだが、そういうのではない。実に清らかで、淫らな関係を想像する気持ちなど綺麗に洗い流される。こんな相手と出会えたなら本当に幸せだろう。偏見や差別に対してのアンチテーゼも含まれ、観るべき作品でもある。英国とインドの関係性も観ていれば自然と頭に入ってゆく。歴史をすんなり学べるという点でも本作は優れている。女王を演じるのは、威厳と貫禄に満ちた名優ジュディ・デンチ。インド人の従者アヴドゥル役に『きっと、うまくいく』のアリ・ファザル。この2人の上質な演技が作品に魂を注ぐ。出演者も全員が格式高くて非常に優れた人間ドラマだ。それでいてユーモアにも富んでいて心地よく観ることが出来る。実際の場所を使ったリアルな映像美も作品に上質さを与えている。衣装などのこだわりも半端ない。本作に関わった全ての人が素晴らしい働きをしたのが感じられる。いやー、良い映画を見せてもらった。想像以上に素晴らしい出来でした。
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