yukihiro084

ヴィクトリア女王 最期の秘密のyukihiro084のレビュー・感想・評価

3.8
思えばヘレン・ミレン演じる
(クイーン)のエリザベス2世も、
孤独だったし、
コリン・ファース演じる
(英国王のスピーチ)の
ジョージ6世も孤独だった。
まぁ(恋に落ちたシェイクスピア)で
ジュディ・デンチが演じたエリザベス
女王はそんな孤独には見えなかったけど。

そうそう(恋に落ちたシェイクスピア)
のジュディ・デンチは、たった8分間の
出演シーンでオスカーを輝き、当時
話題になったっけ。
まぁ、アンソニー・ホプキンスも
たった16分の出演シーンで主演男優賞に
なったってこともあったけど。

ひとつの作品で、いろんな作品を
思い浮かべ、楽しい気分になる。
それもたくさん観てきたご褒美だろう。
話を本作に戻そう。

今作でデイム・ジュディ・デンチは、
ヴィクトリア女王を演じる。
エリザベス2世のひいおばあちゃんに
なるのかな?
1887年が舞台。日本では坂本龍馬が
殺されて、明治時代が始まって20年ほど。
アメリカでは白人入植者による
ネイティブ・アメリカンへの
武力制圧や衝突が苛烈さを増し、
南北戦争やリンカーンの暗殺などで
アメリカが大きな傷を負っていた頃、
世界は植民地争いで戦争や衝突を
繰り返していた、そんな世界。

イギリスは、太陽の沈まむ国と
呼ばれていた。世界中に
植民地があり、インドも、
イギリスの植民地となってい。

ヴィクトリア女王在位50周年の
記念式典のため、インドの刑務所の
職員のアブドゥルは、長身という
理由だけで、記念硬貨の贈呈役に
選ばれ、はるばるイギリスまで
やってくる。

当のヴィクトリア女王は、若くして
最愛の夫を亡くし、心の支えだった
従僕ジョン・ブラウンをも亡くし、
老いと孤独、日々のよくわからない
喧騒、重圧、家族との不仲、
心身ともに、擦り減っていた。
そこにアブドゥルが現れた。
最初は外国の珍獣でも見るような
感覚だったかもしれない。

しかし、アブドゥルは王室の
しきたりを知らない。
彼は昔からの友人のように
ヴィクトリア女王に接してゆく。
詩的で美しい表現をし、
インドの美しい言語やコーランなど
教養もあるアブドゥルは、
ヴィクトリア女王のお気に入りになり、
彼を身近に置いておくことにする。

映画は、ほのぼのとした
2人の交流なのかな、と思っていたが
英国王室の慣習から逸脱し、
そこに白人特有の差別意識もあり、
見えない、そして悪意のある力が
大きな影を落とし始める。

何でも、ほどほどがいいのだが、
深い喪失の後の女王陛下は、
やる事も極端で、観る側も、
それは痛いなぁ、と思ってしまう。

どこまでが真実かはわからない。
理由は映画の最後に明かされる。

でも、こんなことがあったんだな、と。 
映画でなければ知ることのなかった
人と人の繋がり。絆。信頼。
事実は小説より奇なり。
映画でなければ知ることのなかった
その喜びと痛みに言葉を失ってしまう。

ジュディ・デンチはやはり素晴らしい。
デイム。
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