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ミスミソウのRenのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
4.0
機会を逃し続けていたため、初観賞。いじめられている女子中学生が首謀者たちへ血みどろの復讐を行う、だけの話じゃ全然なかった...。

雪と血の相性は最高。最近だと『るろうに剣心 最終章 The Beginning』とかもそうだったが、白銀の世界が血に染まっていく色彩美と緊張感は映画ならではの楽しさ(汚す快感)で、それを存分に味わえたので満足。加えて、血糊の偽物っぽさ&チープさと寒気がするくらいのリアルな痛々しさを同時に感じられる殺傷場面の演出は、分かりやすく彼の作家性。

最初から最後まで倫理観が欠落した人間が大多数という地獄。だけど彼らにも捻れた家庭や過去のトラウマがあって、こういう状況ならこういう異常性って生まれてしまうよね、という説得力が全編に渡ってチラつく。田舎の閉鎖的コミュニティで、抑圧/退屈/嫉妬/発散 を原因として破滅に向かう住人たちの群像劇だった。観客の「あなただけは違うと思ってたのに...」という淡い期待を裏切るように狂い出すキャラクターもいたりして良い。これくらいはやってくれないと生温い。

劇中、人物の力関係がほぼずっと10:0。前半は虐める側が10で春花が0、一度復讐が始まると虐めていた側が0で春花が10。5:5に拮抗する瞬間を見せてくれないので、そこを快楽ととるか感情移入できず乗れないととるかで評価が分かれるかと思った。

多少なりとも、リベンジもの、グロ描写/ゴア描写というエンタメ性に頼っている感も無くはない本作でしたが、その辺りは『許された子どもたち』で完全に成熟していた印象がある。こちらの作品も最高なのでぜひ!

「私たちが普段ニュースで見るのは、事件の結果だけです。でもそこには、私たちが簡単に察知できない長い道筋があります。そんな結果に達した微妙な段階を2時間にわたって追っていける、それこそが映画の力ではないかと思います。」──ポン・ジュノ
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