ひろ

スリー・ビルボードのひろのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.9
「スリー・ビルボード」

マーティン・マクドナーが監督と脚本を務めて製作された2017年のアメリカ映画
第75回ゴールデングローブ賞において作品賞(ドラマ部門)、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞
第74回ヴェネツィア国際映画祭では脚本賞を受賞した

劇作家であるマクドナー監督が手掛けた脚本はアメリカの闇を浮き彫りにするブラックユーモアたっぷりのクライム・サスペンス
娘を殺された母親、人種差別などテーマはかなり重たい
イギリスとアイルランドの国籍を持つマクドナー監督が描いたアメリカ像が持つ意味は大きい

観客は落ち着くことなく、終始ざわついた気持ちにされる。数少ない救いのあるシーンに感動したりもするけど、この作品は観客に問いかけ続ける。この現状を見過ごすのか?と。それは物語内だけでなく、アメリカという国に問いかけているかのようだ

映画賞で絶賛されたのは脚本だけではない。出演者の圧倒的な演技力がこの難しい脚本を成立させている

アカデミー賞、エミー賞、トニー賞という映画・テレビ・舞台という全てのステージで演技賞を受賞しているフランシス・マクドーマンド。この人は美貌で役を掴んできたそこらの女優とは格が違う。演技力。それだけで登りつめた女優の中の女優。旦那のジョエル・コーエン監督は彼女の才能に惚れ込んだんだろうな

今回は娘を殺された母親役。離婚していて息子は生きている。被害者家族だが彼女の行動により四面楚歌。復讐相手も捕まっていない。絶望と怒りだけが彼女を突き動かす。かなり難しい役柄。マクドーマンドは時に悲しみ、愛を表現し、怒りをぶちまける。これはオスカー獲りそうな迫真の演技

個人的にマクドーマンド以上に凄かったのが差別的な白人警官を演じたサム・ロックウェル。最初は典型的な差別主義者で嫌な奴。しかし話が進むにつれて変化して行く人物像と表情。マクドーマンドの役は終始同じ志の役だが、この役はかなり心情の起伏が激しい役で難しい。サム・ロックウェルは元々いい役者だったけど、この役で覚醒したかな。初のオスカーあるね

ウディ・ハレルソンは好きな俳優だけど、今回は役的には3番手で引き立て役。そういう役も普通にこなしちゃうから好きなんだけど。重要な役ではあるからウディ・ハレルソンって監督からしたら有り難いタイプの役者だな

アカデミー賞ではフランシス・マクドーマンドとサム・ロックウェルが受賞しそうだし、近年、エンターテイメント作品より社会派作品が受賞しやすい流れだから作品賞と脚本賞も受賞するかもなあ
エンターテイメント映画が好きだ!って人にはオススメしないけど、演技力がある俳優を見るのが好きな人は見ておいて損はないかな
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