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スリー・ビルボードのぜんのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.6
【怒りは怒りを来す】
行き場のない怒りの感情。
3つの広告に込めた犯人、犯人を捕まえることのできない警察、そして自分自身への「怒り」の感情。
怒りからは怒りが生まれてしまう。
それでもなお、やり場の無い怒りを受け入れて善意を持つ人間の存在は人を変えることができるのだろう。

誰もが今までに「怒り」を感じたことはあるだろう。
その時あなたはどうしただろうか?
ある人は周りに当たり散らし、ある人は感情を押し殺し我慢し、ある人は別のことにのめり込んで忘れようとするかもしれない。
喜怒哀楽があると人間らしいと言う人がいるが、「怒」と「哀」の感情は無い方がいい。
主人公は娘を殺されたことによって「怒り」の感情が生まれて、周りに対しての行動に移した。一度行動を起こしたらもうとどまることができなくなる。
一度知ってしまったら行動への規制が緩くなってしまう人間らしい働きだ。
主人公、そして周りの登場人物それぞれの演技に圧倒された。
特にマクドーマンの存在感、演技の迫力は見事だった。
彼女の怒り、犯人を何としても見つけ出そうという執念は狂気すら感じた。

この国の自由というのも捉えようだと思う。法による裁きが行き届かないからこそ善と悪この境界線が分からなくなる。
正義とはなんだろうか。
犯人を自らの手で殺したり、見つかって捕まったとして、「怒り」の感情が収まっても次に生まれてくるのは「哀しみ」だ。
負の行動からは負の感情しか生まれない。
小さいころのようにケンカをして友達を泣かせてしまっても、後悔しか生まれないのと程度の違いはあれ似たようなものだ。
数学のようにマイナス×マイナスはプラスにならない。
しかし、そういった気持ちをプラスに向かわせるのはマイナスな出来事が起きても立ち向かって前に進もうとする気持ちだ。
マイナスをプラスに変える人間として署長と広告マンの存在は大きい。
正の感情が広まっていくように、マイナスをプラスに変えれる人間になりたいものだ。
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